11月19日、駒澤大学社会学科・李ゼミによる第2回目の公開ゼミが、駒沢こもれびスタジオで開催されました。
今回の公開ゼミでは、NPO法人neomuraの新井佑(あらい・たすく)さんをゲストに主体性やまちづくりについて率直な対話が行われました。
この記事では、そのときの様子を、実際に企画・参加した李ゼミの学生(浅沼奎太さん)がレポートします。

第2回公開李ゼミを開催!
11月19日、第2回公開ゼミ「TOWA RADIO 主体性って、デザインできる? 若者×地域×ぶっちゃけトーク」を開催しました。
NPO法人neomura代表理事の新井佑(あらい・たすく)さんをゲストに、「どうしたら学生が主体的にまちづくりに関わることができるか」というテーマでお話を伺いました。まちづくりは行政や大人がするもの、という固定概念を問い直し、若者自身が「参加・参画したくなる」主体性のあり方について、新井さんの知見を交えながら、本音で語り合う時間となりました。
今回の公開ゼミは、堅苦しさをできるだけなくし、「ラジオ番組風」というユニークな形式で開催。企画・運営は学生主体で行い、「ぶっちゃけトーク」を軸に進行しました。来場者から匿名のお便りを募集できる「Slido」を活用し、その場で質問に答えていくラジオ番組のような対話企画を実施し、会場は大いに盛り上がりました。

主体性は自分の中にない?
冒頭で新井さんは、「主体性は自分の中にはない」と語りました。この言葉を聞いたとき、正直なところ、僕は少し驚きました。しかし、そのあとに続く話を聞いていくうちに、だんだんと腑に落ちていきました。
新井さんが考える主体性とは、「自分の中にあるもの」ではなく、「関係性の中から生まれる現象」だといいます。これまで僕は、主体性とは「自分で考えて行動する力」だと思っていました。けれど、その前提そのものを問い直すような考え方でした。
主体性はデザインできない?
主体性をどうデザインできるのか、という問いへの答えを期待していた僕たちに、新井さんは、主体性そのものはデザインできないと、きっぱり。ただし、主体性が生まれやすい「場(環境)」であれば、デザインすることができるといいます。
具体的には、次のような条件が挙げられました。
- 安心安全な場であること
- 小さくチャレンジできること
- 一緒に考える仲間がいること
- 自分で決定できる環境
- 相手に必要とされる自分であること
- 「先生に認められた」「友達と競争する」「誰かに頼られる」といった関係性の体験。

主体性とは「世界と仲良くなる力」だという言葉も印象に残っています。他者の物差しではなく、自分の物差しを大切にしながら、多様な関係の中で生成し、変化していくもの。そうした主体性を後押しする場や機会には、まだまだ工夫の余地があると感じました。
市民活動と仕事、どちらを優先?
参加者からのお便りの中には、「仕事や学校で忙しい中で、市民活動とどう向き合えばいいのか」「仕事と市民活動はどう違うのか」といった、現実的な悩みも寄せられました。
この問いに対して新井さんは、仕事、ボランティア、市民活動を切り分けて考えるのではなく、「すべてはつながっている」と捉えることが大切だと話します。哲学が「意味」を見出す学問であるように、活動一つひとつにも共通する意味を見出すことができる。新井さん自身は、「仲良くなる哲学」という軸で、仕事や市民活動、学問がつながっているといいます。
仕事も市民活動も、「お金が稼げるかどうか」ではなく、自分が目指す世界観を実現するための手段になります。優先順位を最初から決めすぎず、活動を続ける中で「おのずと出てくる」ものを大事にする。その中で得た知識や人とのつながりを、起業やNPO、学問など、さまざまな形で活かしています。

「みんなで一緒」や「みんなと同じ」は主体性に反する?
「みんなで一緒」「みんなと同じ」でいることは、主体性に反するのではないか。そんな問いも会場から投げかけられました。これに対して新井さんは、
「そもそもみんな違うからこそ、同じところを見出すことが大事だと思う。むしろ、みんなと同じものを見出そうとする姿勢は、とても主体的だと思うよ」
と答えました。この発言を聞き、主体性の新たな一面を発見できたような気がして、目からウロコでした!
まずは、世界と出会おう!
公開ゼミの最後に、学生から「主体性がないと感じる人は、どうすればいいのか」という率直な質問が出ました。新井さんは、「主体性がないと感じるのは、まだ主体性と出会っていないだけ」と話し、「まずは世界と出会うこと」が大切だと語ります。
意識的に多様な世界と接点を持つこと。自分の身の回りでできることを、ちっちゃく始めること。その行動に対して誰かからフィードバックをもらうことで、自己肯定感が高まっていく。これを繰り返す。勝手に動いていい雰囲気やルールがある場では、おのずと主体性が生まれます。

学生が主体的にまちづくりに関わるためには
今回のラジオ企画を通して、僕自身が特に印象に残ったポイントを整理すると、次の3つになります。
- 主体性の定義をアップデートすること
主体性とは、「リーダーシップがある」「自分から動き出す」といった性質ではなく、世界や他者との関係性の中で生まれる現象だということ。 - 主体性が生まれやすい「場」をつくること
主体性そのものを直接デザインすることはできなくても、育まれやすい環境はデザインできるという視点。 - 「主体性」を「ワクワク」に置き換えてみること
難しく考えすぎず、自分の中のワクワクを起点に、小さなアクションを積み重ねていくこと。
とりあえず、行動しよう。行動はどうやってとるかって? いろんな人と会って、体で感じるものや感覚を大事にしていると、おのずと世界が広がっていく。それを「ここだ」と思ったタイミングで、小さく始めてみてほしい。
今回の「ラジオ番組風」対話企画を考案した斗和(とわ)プロデューサーは…
今回プロデュースをやってみて、台本の作成やラジオの中身の打ち合わせなど、一つ一つ手探りの状況で大変でしたが、楽しかったです。そして、正解がなくて、どのようにやったら成功するのかよりも、プロセスが大切だと思いました。失敗を恐れずにまずやってみることが重要だと、身をもって体験できました!


『今日の駒沢』編集部
駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。
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主体性は、個人の中にもともと存在する「性質」ではなく、「世界との関係性(人と人、人と自然・社会)」の中から生まれて育まれていく「現象」です。