前編では、照明デザイナー・目黒朋美さんの原点や、駒沢パーククォーターを「内側から灯す」建築照明の思想について伺いました。 後編では、施設内に3箇所ある「こもれび」の照明について、また、駒沢という「帰ってくる街」にふさわしい光の温度感について聞きました。 記事の最後には、パーククォーターの屋上で出会える自然の奇跡「ビーナスベルト」のお話も。
建物内に3箇所ある「こもれび」の照明もパーククォーターならではの表現ですね。こだわったポイントはありますか?
【目黒】これまでのお仕事の中でも、こもれびをつくった経験はありましたが、今回は少し違うつくり方にトライしました。2階のビオトープ前のこもれびは、レンズ収差によって光が広がり、その縁に虹色が現れる仕組みになっています。
一方、1階のスターバックス前のこもれびの光はあまり広がらないので、レンズ収差が起こらないんですね。それだと自然のこもれびを再現しただけの表現になるので、駒沢パーククォーターならではのニュアンスを加えてみました。何をしたかというと、虹色が生まれるようにレンズのフィルターに自分たちの手で絵を描いたんです。


自分たちで!
【目黒】普通のこもれびであれば、駒沢公園の木々から降り注ぐ、綺麗なこもれびを浴びるのがいいと思うんです。だけど人工的につくっているからこそ、ちょっとした非日常の演出として虹色を加えてみました。
それが照明の楽しさなのかもしれないですね。
【目黒】シーズンによってこもれび照明の背景の差し色も季節により変わるんです。7パターンあるので、何度でも楽しんでいただきたいですね。

「あってよかった」を灯す照明の力。
今後、挑戦してみたい照明デザインはありますか?
【目黒】本当にいろいろとありますね。都市スケールからヒューマンスケールまで携わるなかで、両方が交わる領域にこれからも挑戦していきたいです。よりエモーショナルな要素を含んだような、照明でありながらアートに近い表現にも挑戦したい想いもあります。そして都市の光環境、街全体のあかり環境など、面的な広がりの中で、照明のあり方を考えるようなプランに携わってみたいという気持ちがあります。

何度か出てくる「エモーショナル」という言葉は、目黒さんにとっては、どういう感情を捉えたものなのでしょうか?
【目黒】日本語で言うと「情緒」ですよね。建築や都市の中で、より豊かな光環境をつくれたらいいなと思っています。「それがあってよかった」と、ふと心が動くような感覚でしょうか。特に駒沢大学駅は、“帰ってくる”人が多い駅だと感じています。だからこそ、都心にある商業施設とは全く違う役割を意識しました。都心の刺激的な光とは違って、愛着を持ってもらえるような光になってくれたら嬉しいですね。

確かに、夜に見ても安心する色合いの照明ですね。
【目黒】光の機能的に白い光は人を覚醒させるので、いい睡眠を取るためには、夜は暖かい色温度にすることが推奨されています。なので、パーククォーターの色温度もグッと下げていますし、店舗ごとの照明のガイドラインも色温度を下げてくださいとお願いをしているんです。各店舗が発する暖かい光が魅力的に調和して、それが全体的に暖かい印象を与えていると思います。

最後に、駒沢の人たちがお家で心地よい照明を取り入れるには、何を意識したら良いか専門家の視点からアドバイスをお願いします!
【目黒】私は、間接照明をぜひ使ってもらいたいと思うんですよね。部屋のメインとなる光とは別に、どこかにバウンドさせた光の中で過ごしていただきたいです。駒沢パーククォーターも、ひさしや植物に当たった光が間接照明として機能していて、夜になると柔らかい雰囲気の空間になっていると思います。
間接照明の使い方はいろいろありますが、光源を隠して壁や天井を照らしてみていただきたいです。もうひとつは光のポジションですね。天井じゃなくて、床やテーブルといった下の方に光の位置を持ってくることで、夜と昼の違いみたいなものを楽しむのもおすすめですよ。
ぜひ、間接照明を取り入れていきたいです。目黒さん、ありがとうございました。

目黒さんに案内されてパーククォーターのRoof Top(屋上)へ。「夜の駒沢パーククォーターも楽しんでほしいですが、Roof Topからは、日没にビーナスベルトがみられる貴重な場所です。都会の中でも、視界を遮るものがない高い場所というのは珍しいんですよ。みなさんにもぜひみていただきたいです」<12月17日16:30>
【ビーナスベルト】日の出前や日没直後、太陽とは反対側の空に現れる薄紅色の帯のこと。地球の影(ダークセグメント)の上に、太陽の光が地表に反射し、大気中の微粒子で散乱されることで、美しいピンク色のグラデーションが生まれます。
目黒朋美
多摩美術大学デザイン科プロダクトデザイン卒業。松下電工株式会社(現Panasonic)勤務後、渡米。
2000年~2002年、アメリカ建築照明の草創期より活躍していたGrenald Waldron Associatesにて経験を積み帰国。2002年内原智史デザイン事務所に入所。多くの著名プロジェクトに携わり国内海外の多数の照明賞受賞に貢献。2007年~2016年の退社まで同社チーフデザイナー。2014年~2016年多摩美術⼤学⾮常勤講師。2016年トモルデザイン・メグロ株式会社設立。日・米それぞれの照明デザイン事務所での経験と照明メーカーでの勤務経験という独自のユニークな視点と幅広いプロジェクト経験をフルに活かし、景観照明や、複合施設、オフィス、ホテル、住宅など、多岐にわたる照明計画に参画。
text / senmi lee photo / Ikue takizawa
『今日の駒沢』編集部
駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。
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