「読む50:考える50」村上春樹さんに影響を受けてきた10代。「SNOW SHOVELING BOOKS & DIALOGUE」vol.3

インタビュー

「SNOW SHOVELING BOOKS & DIALOGUE」は駒沢大学駅から徒歩20分。

深沢不動交差点付近にあります。気づけば長居し、いつの間にか「また来たい」と思わせる引力を持つ、「本屋の姿をした何か」。

全3回にわたってお届けしてきたインタビュー。最終回は、店主の中村秀一さんが影響を受けてきた作家・村上春樹さんの存在、そして、これからについてお話を伺いました。

10代の頃に読んだ村上春樹作品は生きるガイドだった

中村さんが多大な影響を受けた作家・村上春樹さんについて教えてください。

【中村】10代のころは、ほぼ『ノルウェイの森』の主人公・ワタナベでしたよ。中学2年生で初めて読んだのですが、正直、「読めた」というよりは「読んだ」いう感覚でしたね。おませでした。でも高校2年生の夏休みにもう一度読み返したとき、何かが決定的に変わってしまうくらいの衝撃を受けました。そこからずっと、村上春樹さんを読み続けています。

ワタナベ青年になりたい、という憧れだったのでしょうか。

【中村】なりたいというより、お手本でした。「こういう風に社会と距離を取り、こういう風に自己完結できたらいいな」と思わせてくれる存在でした。あまりにも読んでいたので、自分が話している言葉が、ほぼワタナベの台詞だったこともあります。「あ、今、なんかいいこと言ったな」と思ったら、『ノルウェイの森』からの引用だった、ということもよくありました。そのくらい、思考や言葉のレベルで血肉になっていました。生きるためのガイドだったと思います。

どんな学生だったのですか。

【中村】やべーやつですよ(笑)。非常に冷笑的で、友人を馬鹿にするような学生でした。

村上春樹作品の魅力はどこにあると思いますか。

【中村】読書って、読みながら考えますよね。ぼくは「読む50:考える50」だと思っていて、左脳で文章を追いながら、右脳で脱線を含んだ思考を巡らせる。村上春樹さんの作品は、その思考がとにかく捗るし、楽しい。体験として、常に豊かなものを与えてもらっています。

読んでいるときの感覚を言葉にすると?

【中村】プールに沈んでいく感覚ですね。ページをめくるごとに、だんだん身体が水に馴染んでいく。本来、水の中では息ができないはずなのに、いつの間にかエラ呼吸になって、水の中で息ができるようになる。没入してく。その感覚がどの作家さんよりも気持ちがいい。それが村上春樹さんの作品です。

『ノルウェイの森』から始まり、さまざまな作品を読まれたと思いますが、没入感という点でおすすめはありますか。

【中村】世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、『ねじまき鳥クロニクル』、『1Q84』ですね。欧米ではマジックリアリズムと呼ばれるジャンルで、日本だとファンタジックと称されることもありますが、没入感が強い作品です。

10代を村上春樹作品とともに過ごしてきたとのことですが、もともと文学少年だったのですか。

【中村】全然です。読書よりも、音楽や映画に夢中でした。カルチャー少年ではありましたね。でも、音楽を聴いていても、映画を観ていても、必ず本が出てくるし、文学につながっていくんです。曲の中に出てくるタイトルや、映画の主人公が読んでいる本を、履修するように読んでいました。

音楽から文学への橋渡しがあったのですね。

【中村】そうですね。ビートルズが好きになって、ジョン・レノンを銃撃したマーク・チャップマンが、事件現場でサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読んだと知って、それならそれを読んでみよう、ということもありました。

「飽きたら辞める」。中村さんの思いと今後の展望

今の中村さんがおすすめする作家や作品はありますか。

【中村】村上春樹さんの影響を受けすぎているので、アメリカの作家ばかり読んでいます。サリンジャー、リチャード・ブローティガン、カート・ヴォネガット・ジュニア。極端に言えば、それあたりしか読んでいないかもしれません。本屋としては、日本の作家や現代作家をもっと読むべきなんでしょうけど、10冊に1冊挟むくらいですね。

今後のビジョンや目標、思いを教えてください。

【中村】ないですね! すみません、先の目標を立てないようにしているんです。このお店を好きでいてくれる方が、「ずっと続けてくださいね」と言ってくださることもありますが、先のことはわからないので、「それは私の勝手です」と答えています。飽きたら辞めたいと思っていて。飽きているのに続けているのって、かっこ悪くないですか。楽しくないのに、なんでやっているんだろう、と思ってしまうので。とりあえずこの1年をどうやっていくかくらいしか考えていません。

そんな中、新しい動きもあると伺いました。

【中村】あ、そうですね。今年から山梨県の北杜市にもう1つ拠点をつくる予定です。20年前まで本屋をやっていた、木に囲まれた物件で。「林の中にある本屋」を、今年中にオープンさせたいと思っています。駒沢とはコンセプトは変わると思います。「わざわざ行く」立地なので、気持ちよく過ごして帰ってもらえる場所にしたいとですね。ライブラリホテルにするか、どんな形がいいのか、今まさに模索中です。「本を使った何かの場所」になる予定ですね。

駒沢でも、さまざまな取り組み、例えば、街全体を巻き込んだブックフェスティバルのようなイベントができたらいいですね。

【中村】ぜひやりましょう。街と、いろいろな世代を、本でつなぎたいですね。

Snow Shoveling Books & Gallery

〒158-0081 東京都世田谷区深沢4-35-7 2F-C

TEL:03-6432-3468

営業時間:13:00~18:00(火曜・水曜定休)

text / shino iisaku photo / aya sunahara

『今日の駒沢』編集部

駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。