gallery Aqui(アキ)オーナーの駒沢発信、アートめぐりが始まります! 大人気の「ロン・ミュエク」展へ@森美術館

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駒沢オリンピック公園のすぐ隣にある壁に時計のかかった家を知っていますか? 黒いドアの向こうに広がるのは多目的スペース「gallery Aqui(アキ)」。セレクトアイテムの販売やポップアップの展示、ワークショップなどを開催しています。オーナーの名は『ミセスK』。実はプロのライターでもあります。全国、世界あちこちのアートを楽しむライターKが、駒沢の人にも紹介したい、最近おもしろかった展示やアートをレポートします。記念すべき第1回目は、「ロン・ミュエク」展。

はじめまして!「gallery Aqui」のミセスKです。これから国内外あちこちの面白いこと、気になることを駒沢のみなさまとシェアしていきたいと思います。

今回は現在、六本木の森美術館で開催されている「ロン・ミュエク」展の内覧会のレポートです。開幕34日で10万人の来館者数を突破した人気の展覧会の見どころや鑑賞法をご紹介します。

1ヶ月で10万人を突破、行列ができるミュエク作品の魅力とは?

一度観たら、強烈に記憶に残るミュエクの彫刻作品の魅力は、なんと言ってもスケール感とリアリズムにあります。鑑賞者はまず、常識を覆すスケールに驚かされ、次に皮膚のシワや毛穴、血管など人体の細部まで綿密に描き出すディテールから目が離せなくなります。近寄って行くと寝息や体温、匂いまで感じられるほどリアルで、今にも動き出しそうそうです。どの作品も不協和音のようなものを宿し、観る人に何かを問いかけてきます。

日本初公開 《エンジェル》 1997年  個人蔵 展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年

今回の展覧会はカルティエ現代美術財団と森美術館の共催の巡回展で、2023年のパリから開幕し、ミラノ(2023-2024年)、ソウル(2025年)と巡り、日本では2026年4日29日〜9月23日まで開催されます。

これまでの開催国では行列ができるほどの反響を呼び、日本でも開幕34日で来館者数が10万人を突破、期間限定で開館時間も1時間前倒しになったほど。

広々とした空間にはミュエクの初期代表作から近年までの11点もの作品が並び、そのうち6作品が日本初公開。貴重な制作現場を記録した映像や写真作品も展示されています。

展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026 年 撮影:吉村昌也 画像提供:カルティエ現代美術財団

作品の面白さが増すお宝映像は必見!

ミュエクの作品は制作現場の舞台裏を知ることで、作品のおもしろさや見方が大きく変わってきます。i

うれしいことに、今回は、めったに見ることができない制作現場の舞台裏を映した「スティル・ライフ:制作中のロン・ミュエク」(48分)と「チキン/マン」(13分)の2本の映像作品が出ていますので、これは必見です。

カメラをまわしているのは25年以上もミュエクの制作活動を記録している、フランスの写真家で映画監督のゴーティエ・ドゥブロンドという男性。二人はものづくりに対する姿勢が似ていることから、深い信頼関係で結ばれているそう。

制作中の作品が怖いほどリアル。ゴーティエ・ドゥブロンド《ロン・ミュエクのスタジオ、ロンドン2005-2013》(2005-2013年)Cプリント、アルミ複合版

映像に映しだされているミュエクのスタジオは、あちこちにリアルな頭や人体が散乱し、不気味な事件現場のよう。その中で命を吹き込むように作品をつくり上げていくミュエクは、ときにヘアメイクアーティストや美容外科医、解剖技術者を思わせます。

わずかな妥協も許さず、孤独に作品と向き合う姿を見て、彼が寡作の作家と呼ばれる理由がよくわかりました。ときおり聞こえてくるのは、機械の作業音と集中するためにかけているというラジオの音のみ。日々の仕事を淡々と記録した映像は無声映画を観ているような没入感があり、あっという間の60分でした。

ゴーティエ・ドゥブロンド《スティル・ライフ:制作中のロン・ミュエク》2013年ハイビジョン・ビデオ48分

実は私は4月の内覧会のときに時間の都合で、映像を少ししか観られず後日に再訪。2本の映像を最後まで鑑賞すると改めて作品を観たくなり、館内をもうひとまわり。自分の中で大きく変わったのは、作者との親近感、作品への愛着が湧いていたことでした。

というわけで、おすすめの鑑賞法は…。

・まず全作品をさらりと観て頭にインプット。 
・次に映像ブースで約1時間の制作映像をじっくり鑑賞。
・再度、映像と重ねながら作品を鑑賞。

せっかくなら2時間以上、時間に余裕を持って訪れると存分に楽しめると思います。
もちろん、この鑑賞法はあくまで個人的なものなのでご参考程度に。
映像ブースは出口手前にありますので、忘れずにお立ち寄りくださいね。

MYミュエク作品ベスト8!

ミュエクの作品はどれも心を掴まれるものばかりですが、中でも面白かった作品8点をご紹介します。
※ 数字は鑑賞順です。

ちなみに先日、森美術館が発表したInstagram人気投稿トップ3は、1位「マス」、2位「イン・ベッド」、3位「マスクⅡ」。どれも大きい作品が話題を集めたようです。

1「イン・ベット」

《イン・ベッド》 2005年  所蔵:カルティエ現代美術財団  展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年

のっけから一気に非日常の世界へと連れて行かれたのが巨大な中年女性がベッドに横たわる、長さ6.5メートル、幅約4メートルの「イン・ベッド」。おそらく、これほど大きなアート作品を観たのは人生で初めて。

サイズアップしても女性の皮膚感や髪や爪のリアル感はそのまま。大きな瞳はどこを見て、何を考えていのか……。決して目が合うことのない安心感から、つい不躾にジロジロと見てしまいました。

2「若いカップル」

《若いカップル》2013年 所蔵:ヤゲオ財団コレクション(台湾)展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年

正面から観ると仲睦まじい2人ですが、裏に回ると男の子が女の子の手首を掴んでいる、ちょっといわくありげな作品。一見幸せそうに見えても深いところではいろいろあるんだよ、という警告めいたものを感じました。

3「エンジェル」

日本初公開 《エンジェル》 1997年  個人蔵 展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年ェル》 1997年  個人蔵 展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年

53階の眺めの良い展示室に鎮座しているのは、初期の代表作「エンジェル」。個人蔵でなかなか観ることができないファン垂涎の作品です。

最初に目に飛び込んできたのは、つややかで美しい翼。ところが前に回ってみると、羽の持ち主は天使のイメージからは程遠いうだつの上がらなそうな中年男性。どこへでも自由に飛んでいけるのに物思いに耽り、ぼんやりと下界を眺めています。彼の心中はいかに……。

ミュエクが選んだ最高のロケーションが、「エンジェル」を一層ドラマティックに見せていました。

4「ダーク・プレイス」

日本初公開 《ダーク・プレイス》2018 年 所蔵:ZAMU(アムステルダム)展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年

真っ暗闇に浮かび上がっているのは苦悩に満ちた男性の顔。彼の正面に立ち、自分も静寂な闇に包まれると雑多なものが視界から消え、心が穏やかになっていきました。

少し並ぶかもしれませんが、不思議な暗闇空間をぜひ体験をしてみてください。

5「チキン/マン」

日本初公開 《チキン/マン》 2019 年 所蔵:クライストチャーチ・アートギャラリー/テ・プナ・オ・ワイウェトゥ(ニュージーランド)展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年

下着姿の老人と鶏が勝負しているように向き合っている、ユーモラスにも見える作品。さて、これから、一体何が始まるのでしょうか?

老人の緩んだお腹や緊張した表情と握りしめた拳、対する鶏の凛とした様子から悲哀を感じうるのは私だけ!? ちなみにモデルはミュエクのスタジオ近くに住む男性だそうです。

ゴーティエ・ドゥブロンド《チキン/マン》 2019-2025年 ハイビジョン・ビデオ 13分

ニュージーランドのクライストチャーチ・アートギャラリーのためにつくられた「チキン/マン」は今回、13分の映像作品にもなっています。

6「マスクⅡ」

《マスクⅡ》 2002年 個人蔵 展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年

部屋の突き当たりにある巨大な「マスクⅡ」はミュエク自身の寝顔。すやすやと気持ちよさそうに寝ている顔は実際の4倍の大きさで、本人に怖いほど似ているそう。髪やひげの1本1本から目元のシワにいたるまで緻密に再現されていますが、裏はなんと空洞!このギャップと潔さもミュエク作品の醍醐味です。

7「買い物中の女」

日本初公開 《買い物中の女》2013年  所蔵:タデウス・ロパック(ロンドン・パリ・ザルツブルク・ミラノ・ソウル)展示風

モデルは、ロンドンで信号待ちをしていた女性。このとき、手ぶらだったミュエクは思わず駐車券の裏にスケッチし、のちに作品として制作しました。

おそらく彼は、育児や生活に追われている女性から、日常生活の中の切なさを感じとったのでしょう。ミュエクは誰もが経験したこと、共感できることを作品の中に落とし、表現できる名人だと思います。

「スティル・ライフ:制作中のロン・ミュエク」の映像の中で我が子を愛しむように作るミュエクが印象的でした。映像終了後、私が真っ先に観に行ったのがこの作品でした。

8「マス」

日本初公開 《マス》 2016-2017年 所蔵:ビクトリア国立美術館(メルボルン)、2018年フェルトン遺贈 展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年

ミュエクからのビッグサプライズは、今回のメインでもある「マス」のインスタレーションです。300平米の空間を100点もの巨大な頭蓋骨がゴロゴロと迷路のように埋め尽くす光景は圧巻!

そして、よく観ると、ひとつひとつの頭蓋骨は色も表情も微妙に違うところもさすが。この作品は開催国の展示空間や特徴に合わせ、ミュエク自身が唯一無二のインスタレーションを作り上げることでも話題を呼んでいます。

「マス」には、山のように積み重なったもの、大量のものや集団、ミサなどの意味があるそう。頭骸骨には「メメント・モリ(死を忘れるな)」というメッセージがあるようですが、死のアイコンに囲まれ迷路を歩いていても、恐怖心がわかないのは非現実すぎるシチュエーションのせい⁉︎

鑑賞者はいつの間にかテーマパークにいるかのような気分になり、記念写真を撮り、軽やかに通り抜けて行きます。死に対する概念が一瞬でも変わることがミュエクの狙いのひとつだったのでしょうか。見応えたっぷりの「ロン・ミュエク」展、いかがでしたか? 

非日常のミュエクワールドを、さっそく体験しにおでかけください♪

最後にロン・ミュエクってこんな人

ミュエクは1958年オーストラリアに生まれ、86年より英国在住。ロンドンで活動後、現在はロックフェスなどでも有名なワイト島に拠点を構えています。

もともとは特殊効果やパペットを手掛ける作家で、1990年半ばに彫刻制作を開始。シリコンやポリエステル樹脂などを使いてリアリズムと逸脱したスケールの彫刻作品で知られる現代美術家です。

1作品の制作に数年をかけることもあり、30年で制作された作品はわずか50点弱。‘寡作の作家‘としても知られています。

1997年に、他界した父親を小さくリアルに表現した「死んだ父」をロンドンで開催された「センセーション:サーチ・コレクションのヤング・ブリティッシュ・アーティスト」展に出品し一躍注目を集めました。

「ロン・ミュエク」展
期間:~2026年9月23日(水)
時間:10:00~22:00 ※火曜のみ17:00まで(入館はいずれも閉館時間の30分前まで)
6月から9月の土・日・祝休日、お盆期間は朝9時開館下記の日程は、開館時間が9:00-22:00に変更となります(通常開館時間は10:00-22:00)。
6月〜9月:毎週土曜日、日曜日、祝休日
*7月18日(土)は除外
8月8日(土)〜16日(日)お盆期間(連日)
休:無休
会場:森美術館
港区六本木ヒルズ森タワー53階
主催:森美術館 カルティエ現代美術財団

ライターK
駒沢在住.、執筆活動をしながら公園前で小さなギャラリーを営んでいるライターKの超私的レポート。ホッとひと息ついたときに目にしていただけたらうれしいです。

『今日の駒沢』編集部

駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。