過日、『駒沢の生活史』の書籍版 全53冊の完成を記念して、全冊を自由に手に取れる「読書室」が一日限定で開かれました。
『駒沢の生活史』とは、駒沢に縁のある約50名の語りを、聞き手たちが半年以上かけて聞き、書き、形にしたものです。本を真ん中に、皆でその完成を祝い交わった一日を紹介します。
『駒沢の生活史』書籍版の完成まで
『駒沢の生活史』は、社会学者・岸政彦さん編の『東京の生活史』(筑摩書房)を土台にした、いわばそのスモールタウン版です。駒沢地域の暮らしを豊かにする「駒沢こもれびプロジェクト」の一環として、2024年の夏から冬にかけて、駒沢大学駅や駒沢公園を中心とするエリアで進められました。
このプロジェクトの始まりは2024年5月。プロジェクトメンバーである「聞き手」約40名が揃ったのちに、プロジェクトディレクターの西村佳哲さんによる「生活史の聞き方」の講座を行いました。

うまく話を引き出すのではなく、ただ相手についていく。相手の舟に乗るように聞く——ワークショップで繰り返し語られた西村さんの言葉に支えられながら、聞き手メンバーが語り手の語りに耳をかたむけました。そうして出来上がったのが、53名、一人ひとりがどう生まれ育ち、どう生きてきたか。その「個人の生きた歴史・物語」です。2025年6月から『今日の駒沢』で順次ウェブ公開され、このたび、全53冊の書籍として完成しました。

「読書室」の中で交わしたそれぞれの人生
今回の「読書室」は書籍の完成を記念し、全冊を自由に手に取れる場として一日限定で開かれたものです。ディレクターの西村さんと事務局・編集を担った熊谷麻那(筆者)、そして今日の駒沢の編集長・望月早苗さんが在廊し、朝から夕方まで途切れることなくひとが訪れました。その多くは、プロジェクトの「聞き手」を担ってくださったみなさん。手を離れてから一年以上が経っているにもかかわらず、同じ熱量でともに完成を祝ってくださいました。

お子さんを連れて現れた(しかも双子を妊娠中)瀬戸潤子さん、駒沢パーククオーターのすぐ裏に住み、合計3つのお話に関わってくださった沼部幸博さん、協力として名を連ねたイトウヒロコさんも駆けつけてくださいました。

挿絵を手がけた佐倉みゆきさんは、完成した本の裏表紙を眺めながら「こんなに描いたなんて、幸せすぎる」と振り返ります。

ご自身でも、生活史のZINEをつくられたとりのささみこさん。佐々木彩子さんは勢い余って「名古屋の生活史」にも申し込んだそうです。ヒライシカナコさんは騎手だった祖父の話を父から聞いたばかりで、今年はZINEをつくる予定とのこと。ほかにも、愛知からやって来た学生さん、聞き手のメンバーに誘われてはじめて駒沢の生活史に触れた書店員さんもいました。
駒沢の生活史プロジェクト、ひと区切り。生活は続く
みなで再会を喜び、お茶を飲み、「その後、どう過ごしていた?」と語り合いました。1、2年も経つと、ひとには本当にいろいろなことが起きるようです。あの暑い日々に一緒にワークショップをしたことや、原稿を通して人生を少し見せてもらったこと、それらはひとびとの人生に照らすと、ほんの些細な一瞬のことだったんだと気付かされます。

駒沢の生活史は、東京の中の小さな街・駒沢にいる/いた、ひとりの人生のほんの一部が集まったものです。それぞれの語り手・聞き手には、生活史として描かれた以外にも膨大な、語りきれない人生があります。そんなひとたちがこの街、この施設、この交差点、この公園、この道を歩いています。
プロジェクトを通して聞き手・語り手の人生を少し覗かせてもらいながら、その厚みに圧倒されてばかりでした。これからもふと思い出しては、その果てしなさに驚き続けるでしょう。一読者としても、それぞれの物語が、本当にゆたかで、おもしろかった。
この「読書室」をもって駒沢の生活史プロジェクトはひと区切り。まちを歩きながら、それぞれの人生に、思いを馳せてみる時間がみなさんにありますように。関わってくださったみなさん、読者のみなさん、本当にありがとうございました。ウェブでの公開は引き続き行われていきますので、よかったらたまに覗きにきてください。
『今日の駒沢』編集部
駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。
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