「天ぷら油で走るバスが駒沢にある」ーーそんな噂を聞き、調べてみると駒沢公園近くの深沢ハウスから自由が丘駅までを繋ぐ無料の循環バス「サンクスネイチャーバス」にたどりつきました。1997年から走り始めたこのバスは、2023年には累計乗車人数200万人を突破。駒沢と自由が丘地域の住民にとって、生活に欠かせないバスになっています。
天ぷら油で走っているってどういうこと？ なんで運賃が無料なの？ さまざまな疑問を解消するべく、深沢ハウスから実際に「サンクスネイチャーバス」に乗って、事務局にお話を伺いに行きました。
天ぷら油で走っているバスがあるという噂を聞いたのですが。
事務局 当初は天ぷら油で走っていましたが、現在は軽油で走っています。
いつから軽油に変わったんですか？
事務局 サンクスネイチャーバスは1977年から走り始め、初代のバスは100%天ぷら油などの廃食油をリサイクルした燃料（BDF）で走っていました。その後、法改正によりBDF混合率5%以下の軽油で走っていましたが、リサイクル燃料を置かせてもらっていたガソリンスタンドが閉店した為、2018年からは軽油100%で走っています。
じゃあ20年ぐらいはずっとリサイクル燃料で走っていたんですね。
事務局 できればまたリサイクル燃料に戻したいと考えていて、今はその方法を模索中です。
そもそもサンクスネイチャーバスが生まれたきっかけは、なんだったのでしょう？
事務局 4人の発起人（上・写真）が集い、バスの立ち上げに尽力しました。当時、染谷商店（「染谷商店」は1993年、世界で初めて廃食油（植物油）をディーゼル燃料化した「VDF(R)（ベジタブル・ディーゼル・フューエル）」の開発をしていた)さんが回収した廃食油の燃料化に成功していたので、その燃料でバスを走らせることを思いつき、導入したのがサンクスネイチャーバスの始まりです。
理事のひとりが「自然さん、ありがとう」というコンセプトの「サンクスネイチャー」という環境に配慮したお店を自由が丘で経営していて、地域住民のために役立つバスを走らせたらどうかという提案からでした。
当時、燃料となる廃食油は家庭で使われたものがリサイクルされたんですか？
事務局 はい。以前は家庭から出た廃食油をいくつかの場所で回収し、回収された廃食油は染谷商店さんが精製し、バスの燃料になっていました。今は「目黒区エコプラザ」でのみ回収しています。
当時はサンクスネイチャーバスが通ると天ぷらの匂いがしたみたいで、「天ぷらバス」とも呼ばれていたそうです。
運賃は無料。地域のサポートで走るバス
今日は実際にサンクスネイチャーバスに乗ってきたのですが、運賃が無料ということに驚きました。
事務局 一般的なバスと違って、送迎バスとして認可されたので、運賃を取ることはできず、無料バスになったんです。地域の企業やお店、また個人の方がサポーターとなり、その会費とバスのラッピングなどの広告協賛金によってサンクスネイチャーバスは運賃を取らずに運行できているのです。
サポーターの皆さんの力で成り立っているんですね。
事務局 はい。サポーターさんに支えられサンクスネイチャーバスは30年近くも走り続けることができています。
はじめから３ルートあったのですか。
事務局 最初は八雲ルートだけでした。深沢ハウスができた2004年に２つ目となる駒沢公園ルートがスタートしました。産能大ルートは2015年、産業能率大学の送迎バスとして運行を始めました。
バスの停留所はどういう基準で決まったのでしょうか？
事務局 サポーターさんの中でも多く出資していただいている「メジャーエリアサポーター」、「キーエリアサポーター」の敷地内にバス停を置かせていただいています。
地域住民にとっても便利な存在ですよね。
事務局 そうですね。駒沢公園ルートでは深沢ハウスの住民の方、または近隣にお住まいの方が多く利用されています。八雲ルートでは年配の方がスーパーでお買い物をした後にバスを利用し、家の前で降りる方もいます。バスが通る住宅街が急な坂道なので、とても感謝されています。
え！ バス停がなくても、お家の前に停めてもらえるんですか？
事務局 交差点など停められない場所もありますが、バス停以外でも乗り降りできます。目印を運転士に伝えれば、降りることができます。
初代ボンネットバスの時から長くサンクスネイチャーバスを利用されている方が数名いますが、「いつも無料で乗せてもらって申し訳ないわ。とても助かっているわ。これからも長く続けてね」と嬉しい言葉をかけていただき、個人サポーターとして長年応援してくれています。現在30人余りの方が個人サポーターになってくれています。
地域の人たちによって、バスの運行が成り立っているのですね。
事務局 はい。地域のお年寄りや小さなお子様連れの方たちのためにも、長く続けていきたいです。燃料費や人件費が高騰する中、これからも長く走り続けるためにはより多くのサポーターさんの協力が必要です。新しくサポーターになってくれる企業やお店、個人サポーターを募集中です。
ぜひ存続していただきたいです。またリサイクル燃料で走れるといいですね。
事務局 バスがなくなると困る方がたくさんいらっしゃいます。特に高齢の方たちの足を止めないようにこれからもがんばっていきたいと思います。「環境に優しい」というところが出発点なので原点に立ち戻りたいと思っています。
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天ぷら油で走り始めたエコなサンクスネイチャーバスは、いまや地域の人たちにとって大切な足となり、生活に欠かせない存在になっていました。気になっていたけど利用したことがないという方は、いちど利用してみてはいかがでしょうか。地域に根ざすバスを応援したいという方は、ぜひサポーターもご検討してみてください。
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バスの位置情報がリアルタイムでわかる
便利なアプリ「知らせるバス」
下記画像のQRコードを読み込むと、リアルタイムでサンクスネイチャーバスの位置情報を知ることができます。時刻表がなくても、どれくらいでバスが着くのか予測ができて便利。もし運休であれば「運休中」と表示されるので、バスを利用している方はぜひアプリをダウンロードしてみてください。
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サンクスネイチャーバス情報
運賃：無料
運行日：八雲ルート・駒沢公園ルート 水曜日を除く毎日（年末年始運休あり）
産能大ルート 土日祝を除く毎日（夏季、年末年始運休あり）
詳しいルートなどは下記ウェブサイトをご確認ください。
http://www.thanksnaturebus.org/
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