駒沢『SEMPRE HOUSE』のルームツアー。キッチン、リビング、心地よい暮らしをつくっていく|vol.3

家具、照明、食器やキッチンツールなどの雑貨からアートまで、独自の目線でプロダクトを取り揃えるライフスタイルショップ「SEMPRE」。3回シリーズでお届けしている最終回となります。vol.1では、会長・田村昌紀さんのご自宅兼ショールームの「SEMPRE HOUSE」について、また田村さんの駒沢への思いをお届けしました。
vol.2では、「心地よい暮らし」とは何か、家づくりで大切にしたことを伺いました。
vol.3となる今回は、田村さんの、愛するものと各部屋のこだわりについてです。

SEMPRE HOUSEに住む田村昌紀さん

「優れたデザインのものを使うときは、少し理解が必要です」。思い入れの深い、アルヴァ・アアルトの3本脚の椅子

 「SEMPRE HOUSE」にはたくさんの美しい家具、アートがありますが、そのなかでもいちばんのお気に入りや思い入れのあるものはなんでしょうか。

【田村】やっぱりアルヴァ・アアルトの3本脚の椅子ですね。玄関にあるスツールが50年前に買ったものです。ほかにもアメリカのガレージセールで買ったヴィンテージ、SEMPREの記念バージョンなどさまざまありますね。

3本脚の椅子を愛していらっしゃいますが、その魅力はどこにありますか。

【田村】リビングの長机に合わせて椅子が6脚あるでしょ。すべて3本脚だから、脚の数は18本ですよね。これが4本脚の椅子だと脚の数は24本になるんです。脚の数が少ないから空間に抜け感が出ます。そして、軽いから動かしやすい。さらに安定している。カメラの三脚を「トライポッド」と呼びますよね。3本脚が一番安定性が高くてガタつかないんですよ。

デザイン性も高いですよね。

【田村】そう。ただ、優れたデザインのものを使うときは、少し「理解」が必要です。例えば、椅子としてではなく、踏み台として使うと危ないです。お子さんが座るとバランスを取ることが難しいかもしれません。そういう意味では4本脚は安全です。日本ではそれが主流だし、理屈としてはそうなんです。でもぼくは3本脚のほうがデザイン面でも使い心地の面でも優れていると思っていますね。

こだわりと美しさの詰まった田村さんの「暮らしの哲学」をルームツアーで紹介

「SEMPRE HOUSE」にお客さんが来たら、田村さん自らルームツアーをされるそうですね。

【田村】時間が合えば、ぼくがご案内していますよ。今日もルームツアー、しましょうか?

ありがとうございます! ぜひお願いします。

【田村】まずはリビング。どこでもお見せできますよ。収納棚にはお客さまが来たときに使う器を入れたり、夜に飲むお酒を入れたりしていますね。どこも余白を残して収納しています。

本棚はあえて低くしているのですか。

【田村】そうです。上部の空間を広くとっています。ここの部分はコンクリートなんですが、小叩き仕上げといって、職人の手作業で細かな細工をしています。この壁は中庭まで続いているので、外側と内側に一体感が生まれています。

玄関で印象的なのは、こちらの絵画ですね。

【田村】扉を開けたときに目に入るところに猪熊源一郎氏の「婦人像」を飾っています。実は、これはぼくが小学生のときに両親が購入したものなんです。両親の家を整理することになったときに、東京に持ち帰って玄関にかけました。70年間ずっと、ぼくはこの絵に迎えられているんです。同じ絵画をみているのに、受け取る印象が日々違うのもおもしろいですね。

それは、玄関とも続いているこちらの階段から入る光の具合にも関係するのでしょうか。

【田村】そうですね。天候や時間にもよる光の具合もあるかもしれないし、その日の気分かもしれないですね。この階段にはこだわりがあって、ただ上階に上がるためだけにつくるのではなく、登るときに楽しめるものにしたかったんです。それで、半分螺旋の階段にしました。直線と螺旋の組み合わせです。螺旋のデザインも美しいし、光の入り方も美しいでしょ。

本当ですね。愛犬のチビもお気に入りのようですね。

【田村】玄関や階段でよく寛いでいますね。さて、続いてはキッチンとダイニングです。ダイニングにはレシピなどこの部屋で読みたい本だけを置いていますね。1か月で入れ替わったりします。

うちの場合は来客が多いので、器が多いんですよね。KIKOFのプレートやボウルは和洋中どれにも合うし、薄いのでコンパクトに収納できます。陶器は割れてしまうこともありますが、継いで大事に使っていますね。カトラリーは、1950年代のデンマークのヴィンテージやフィンランドのものなど、食事の内容によって変えています。

キッチンの奥には洗濯機と乾燥機があるんです。3階の脱衣所で洋服を脱いで入れると、ここに落ちてくる仕組みです。

すごくチャーミングで遊び心のある仕組みですね!

【田村】生活なので、動線も考える必要がありますよね。これのおかげで面倒に感じずに洗濯ができています。では2階にいきましょう。

2階はプライベートな空間ですね。

【田村】仕事部屋兼寝室とお風呂場ですね。このドアの先はもともとは子ども部屋だったけれど、今はタンスを置いています。ですので、開けるとニッチな空間ができてしまったんです。そこを有効活用しています。家にできてしまう中途半端な空間の使い方も、工夫次第で素敵なものになりますよ。

最後は屋上ですね。まさか屋上にこんなに豊かな緑があるとは思いませんでした。

【田村】ここがぼくの家の庭です。ハーブ、りんご、いちじく、レモン、ゆず、ぶどう……。40年かけて育てたたくさんの植物がありますよ。この空間はぼくの暮らしのなかでとても大切な場所なんです。季節がよいときはここで夜のパーティをして、日曜日にはブランチをいただいて。そんな潤いのある生活ができます。「40坪では庭は無理」と決めつけないで、どんな生活がしたいのか、それにはどうしたらいいのかアイディアを出した結果の庭です。

お子さんたちの成長にも、大きく寄与した場所ではないでしょうか。

【田村】そのとおりで、子どもたちはよくここで遊んでいました。今では、チビの遊び場所でもあります。土内に発泡ガラスの粒を埋めて、雨水を排水溝に流して水はけをよくしたました。遮るものがないこの場所は日当たりがよく、実りの多い庭になりました。ぶどうも植えているので、それでぶどう酒をつくるのが将来の楽しみです。

SEMPRE

インテリアショップ

〒153-0044 東京都目黒区大橋 2-16-26

OPEN:11:00~18:00 (金曜・土曜のみ19時まで)
CLOSE:水曜

※SEMPRE HOUSEについてはSEMPREに直接お問い合わせください

text/ shino iisaku photo/ aya sunahara