12月21日(日)、駒沢パーククォーターで開催されるアートフェスティバルvol.1。その企画を担うのは、長年にわたり日本のエンターテインメントを支えてきたダンサー・振付家、RYON・RYON氏(野村涼子さん)。後編では、先生が主宰するダンススタジオに込めた想いや、これからはじまるアートフェスティバルを、駒沢という街でこれから育てていきたい未来についてお話を伺いました。
ビビビと直感に従って動くRYON・RYON先生
現在はクリエイティブ全般に関わる「R2 CREATIVE」の社長としても活躍されていますよね。
【RYON・RYON】代表になったことで、日本のトップ企業の経営者の方々など、様々な分野のリーダーとの繋がりが生まれました。そんな方々と話していると、必ず出てくるのが「日本をどう良くしていくか」という未来についての話題です。特に子どもや地域についての視点が多く、首都集中型の問題や地域創生については、ずっとなんとかしていきたいと考えていて。それで2024年に、深沢にダンススタジオ「Studio WOO by R2」を立ち上げたんです。
例えば、お母さんたちが子どもの習い事の送り迎えにかける時間は、人生のなかでも大きなロスだと思うんですよ。子どもも、都心のスタジオに1時間かけて行って、レッスンを1時間受けて、1時間かけて帰ると3時間になります。でも、家から5〜10分の近所にスタジオがあれば、同じ3時間でレッスンを2本受けられますよね。
そこにニーズがあると分かったので、情報と人が集中する渋谷や恵比寿といった都心ではなく、自分が暮らす地域にスタジオを開くことにしました。一般的な感覚からすると、都心から離れた場所にスタジオを作ったことを不思議がられるんですけど、やっぱり私は地域を盛り上げていきたい気持ちがあったんです。

それまで、駒沢との関わりはあったのでしょうか?
【RYON・RYON】実は駒沢に住み始めて10年以上が経ちます。それまでは渋谷などの都心に住んでたんですけど、2011年の東日本大震災で、生活インフラではない芸能の仕事は真っ先に止まってしまいました。それで、無収入のまま家賃の高い家に住み続けるのはリスクが高いと考えて、引っ越すことにしたんです。
犬を飼っていたこともあって、いつも代々木公園や世田谷公園といった公園の近くに住んでいたので、じゃあ次は駒沢公園の近くかなと。そんなふうにして、導かれるように駒沢で暮らし始めました。

ダンススタジオの物件とも、運命的な出会いだったそうですね。
【RYON・RYON】私、本当にすべて直感で動いてるんです。
直感ですか。
【RYON・RYON】家族の事情で家を引っ越さなきゃいけなくなって、ある日突然「家を探しに行こう」と思い立ちました。柿の木坂、用賀方、二子玉川…どの方面に行こうか考えているうちに、なんとなく「深沢の坂の上に行ってみよう」と思って向かったら、工事中の今の物件と出会ったんです。ちょうど管理会社の方が目の前に立っていたので、その場で直接問い合わせました。本当に直感でしか生きてないかもしれません(笑)。

「落ち込んでる時間」が人生で一番ムダ⁉︎
実際に近所の子どもたちが、スタジオに通っているんでしょうか。
【RYON・RYON】はい。遠方から通ってくれる子もいます。まだスタジオを始めて1年なんですけど、うちにきて変わった子たちが多いです。スキル面においても精神面においても、子どもたちの成長がすごく早いんです。
何か特別なことをしているんですか?
【RYON・RYON】「喜怒哀楽」を大事にするという、感情のトレーニングも大切にしています。例えば、喜んだり楽しい時に感情を出すことはいいことだけど、怒ったり悲しんだりといった感情を出すのはダメだという風潮があると思います。でも、うちでは「すべての感情を大事にしよう」と伝えています。そうすると、注意されても落ち込まなくなるんです。落ち込むということは、停滞を表すことだと考えていて、起きた事態を正しく捉えられなくなってしまいます。なので、表現者として感情というものを大切にしています。
すごい。
【RYON・RYON】同時に、注意されるということは成長できるということでもあります。なので、注意を怒られたと捉えずに「ありがとうございます」とポジティブな気持ちで受け取ることが大事だと伝えています。これは私自身もやってきたことです。それもあって、みんな成長が早いんですよ。
感情の扱い方がわかると、自分のなかの表現を出しやすくなりそうですね。

【RYON・RYON】感情を抑えずに大泣きする子がいるんです。他の子たちは「どうして?」と驚いていたんですけど、そんなふうに泣ける子って実は少ないんです。だから我慢しながら泣いてる子に「ほら、大声で泣いてごらん」と伝えることもあります。
「ちゃんとドアを閉める」や「人に流されない」という言葉がならびますが、規律的なことと感情的なことを同列に考えているということが、子どもにとってすごく大切なことだと思いました。
【RYON・RYON】「人の時間を奪わない」もあるんですけど、レッスンではフィードバックの時間が多いんです。子どもたちにも発言してもらうんですけど、厳しく育てられた子だと、否定されるかもしれない不安から黙ってしまうことがあるんです。時間は有限だと理解してからは、お互いに“人の時間を奪わない”ように自然と意識できるようになりました。

文化の土壌を育んでいきたい
12月21日に、駒沢パーククオーターでアートフェスティバルを開催される予定ですが、開催のきっかけは?
【RYON・RYON】駒沢パーククォーターを訪れた際に、イベントスペース「zawazawa」にいたスタッフの方と話してみると、地域を活性化したいという同じ志を持っていると実感したんです。これまでの経歴も含めて、私はもともとうまくいってるところに入るよりも、未発達のところに入って、自分で道を切り拓いて、みんなで笑顔になれる未来を作ることが多いんです。なので、駒沢パーククォーターで初めてのダンスイベントを開催することになったのも、本当にご縁を感じています。

アートフェスティバルは市民参加型のイベントですが、どんな想いで企画されたんでしょうか?
【RYON・RYON】駒沢にも深沢にも、素晴らしいダンサーや表現者、アーティストがたくさんいらっしゃいます。私たちも深沢でダンススタジオを運営しているからこそ、駒沢の人たちと一緒に楽しめる場所を作りたい。表現を通じて地域を活性化させたり、次世代を育てながら「文化の土壌づくり」をしていきたいという想いがあります。ゆくゆくは地方からも、駒沢を目指してきてくれるような土壌ができたら嬉しいですね。
スタジオWOOの指導者でもあるR1KUTO先生をはじめとした次世代の若手ダンサーたちが、牽引していくと思っています。
とてもワクワクします! RYON・RYON先生、ありがとうございました。


〈駒沢アートフェスティバル〉


RYON・RYON
東京都出身。幼少期からピアノとバレエを学び、帰国後 歌とダンスを本格的に習得。その後、ニューヨークやロサンゼルスで表現力を磨く。
安室奈美恵・倖田來未・モーニング娘。など多数アーティストの振付・演出を担当し、 テレビやライブなど幅広いエンターテインメントの現場で活躍。現在は 世田谷区深沢にてStudio WOO by R2 を主宰し子供から大人まで「自分らしく輝く力」を育てている。
2025年12月、駒沢にて“つながるエンタメ”をテーマに 駒沢パーククォーターにて第1回『駒沢アートフェスティバル』を主催。 地域とエンターテインメントを結ぶ新たな文化発信に取り組んでいる。
photo / aya sunahara text / senmi lee
『今日の駒沢』編集部
駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。
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