駒沢大学駅から徒歩20分。
深沢不動交差点付近に、「SNOW SHOVELING BOOKS & DIALOGUE」はあります。
気づけば長居し、いつの間にか「また来たい」と思わせる引力を持つ、「本屋の姿をした何か」。
全3回にわたってお届けするインタビュー。
第2回目となる今回は、実店舗を構える「駒沢」との関係性、そして駒沢を飛び出して展開する移動書店の取り組みについて、店主の中村秀一さんに伺いました。
長年住んでいる駒沢で、1日100人を捌くより、10人としっかり向き合いたい

なぜ駒沢にお店を構えたのでしょうか。
【中村】めちゃくちゃ単純で、ずっと駒沢に住んでいるからです。2012年に開業したときだけ、渋谷に住んでいたのですが、物件を決めて、以前住んでいた駒沢にまた戻ってきました。
物件探しでは、どんな点を重視しましたか。
【中村】大きな公園がある街、というのは譲れないポイントでした。代々木、三宿、駒沢あたりを探しました。当時は、もっと公園に近い路面店の物件を探していたんです。でもなかなか物件がなくて、あっても家賃が高い。決めかねていたときに、暇つぶしのつもりでこの物件の内見に来ました。「2階だし、雑居ビルだし、ないな」と思いながら。でも、ここに入った瞬間に、「ここでやったほうがいい」と謎のインスピレーションがあって、決めました。

そこから、ずっとこの場所なのですね。
【中村】実は当時は、ここで名前を売って、お金を貯めて、いずれは路面店を出そうと思っていました。でもやってみたら、この規模感や空間がちょうどよくて。「ここでいいな」と思うようになりました。路面店をやったことがないので比較はできませんが、ぼくがやりたい形は、たぶんこちらなんだと今は感じています。
「やりたい形」とは?
【中村】ちょっとかっこつけた言い方になりますが、人対人のコミュニケーションがしたいんです。お店とお客さんの「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」ではなく、「こんにちは」「さようなら」がしたくて。繁華街の路面店でそれをやると、きっと僕は消耗してしまう。集中力がキープできないと思うんです。1日100人を捌くより、10人としっかり向き合いたい。その方がやりがいを感じられると思って、このスタイルを続けています。
入口が裏手で、さらに2階という立地もあって、冷やかしではなく、目的来店が多そうですよね。
【中村】9割5分くらいは目的来店です。だからこそ、わざわざ来てくれた人の期待には応えたいと思っています。結果的に、ぼくとしてはこの場所でよかったと思っています。
長く住み、お店も構える駒沢という街を、どう感じていますか。
【中村】ぼくは、公園通りの西側にある4丁目と、ロイヤルホストやバワリーキッチンがある5丁目が好きです。駅前とは違う魅力がありますよね。駒沢全体としては、多様性のある街だと思います。平日の昼間に、半袖半ズボン、サンダルで歩いていても誰も気にしない。都会の真ん中で、これだけ大人が自由に過ごしている場所は、なかなかないんじゃないでしょうか。

「待つ」だけでなく、全国へ。移動書店という選択が、実店舗にもたらすもの
2022年から、移動式ブックストア「SNOW SHOVELING BOOKS ON THE ROAD」を始められました。きっかけを教えてください。
【中村】2012年創業で、2022年がちょうど10年目でした。それが、どうも嫌でして。「10」がつくと急に貫禄が出てしまって、「すごいですね」なんて言われる。居心地が悪い。そこで勝手な妄想で、デジタルカウンターで2桁のない世界に自分が存在していることにしたんです。そうすると9の次は0。じゃあ、一度ゼロに戻って、新しいことを始めようと考えました。
実店舗があるのに、移動書店を始めるのは珍しいですよね。
【中村】そうなんです。一般的には、移動本屋から実店舗を持つ人が多い。でも、実店舗を持っているのにわざわざ移動する人はあまりいない。それもおもしろいなと思いました。
コロナ禍を経たことも影響していますか。
【中村】そうですね。パンデミックのときに、「待つ」だけの商売の怖さを知りました。自分で外に出られる体制を持ったら、これから先、強みになるし、純粋に楽しいだろうと考えました。

実際にやってみて、いかがですか。
【中村】大変だけど、めちゃくちゃおもしろいです。もともと旅が好きなので、仕事という大義名分を持って全国に行けるのがうれしいです。行く先々での経験が、実店舗にもいい刺激として返ってきています。

どんな刺激でしょうか。
【中村】実店舗にいると、ある意味「王様」になれてしまう。でも、移動書店で行く場所では、僕のことも、この店のことも、誰も知らない可能性がある。アウェイを感じることができます。実店舗だけでは見えなかったものが見えてきます。
これまで、どんな場所に行かれたのですか。
【中村】昨年、念願叶って北海道に行くことができたので、日本では、あと行っていないのは沖縄だけです。今後は台湾など海外にも行ってみたいと思っています。毎年会える人を少しずつ増やしていって、「お久しぶりです」「今年も会えましたね」と言える関係ができたらいいですね。

vol3. へ続きます…
Snow Shoveling Books & Gallery
TEL:03-6432-3468
営業時間:13:00~18:00(火曜・水曜定休)
text / shino iisaku photo / aya sunahara
『今日の駒沢』編集部
駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。
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