駒沢パーククォーターのサインデザインを手がけたMOTOMOTOの松本さんと坂本さんにお話を聞いていく後編。ロゴやサインはどんなふうに生まれたのでしょうか。完成したら終わりではなく、駒沢の人たちに使われながら少しずつ育てていく駒沢パーククォーターのデザインについて、お話を伺いました。
半公共的な施設デザインへの挑戦
駒沢パーククォーターのサインデザインを手がけることになったのはコンペだったと思いますが、参加しようと思ったきっかけは?
【松本】基本的にコンペには参加しないんですけど、駒沢は地元ということもあって参加することにしました。
MOTOMOTOさんに決まったあとは、どんなふうにデザインを進めていったんでしょうか?
【松本】施設名が「駒沢パーククォーター」に決まった段階で、改めてデザインを考えていきました。公民館のような半公共施設を目指していたのもあって、デザイン側からもいろんなアプローチができそうだなと思いました。

ロゴやサインは、テープのように連続するデザインがとても印象的です。
【松本】最初の発想は「道」ですね。パーククォーターの前から駒沢公園まで続く道のようなイメージです。一般的な施設ロゴは、シンボルマークと名称を組み合わせたデザインが多いですが、シンボルマークは何かを象徴するものなので、権威性を帯びやすいんです。そうすると半公共施設というイメージには、そぐわないと感じていて。
そう考えていくと、文字とシンプルな一本の線で構成するようなデザインに、自然と近づいていきました。建物自体もコンクリートを基調としていて、「ストリート」というキーワードも出ていたので、テープっぽく見えるロゴがフィットするんじゃないかと、少しずつ形にしていきました。それにテープ状にすると、一貫性を持ちながらサインにもスムーズに展開できる点も良かったんです。
【坂本】ピクトグラムもオリジナルでつくったんですけど、世田谷区の条例の関係で、結果的にJIS規格のピクトグラムを使うことになりました。せっかくつくったのにと一瞬思ったんですけど(笑)。おかげでより公共感が増しましたね。
鹿港(ルーガン)さんは、お客さまが並ぶ列を誘導するのに、ロゴでつくったテープを使っていますね。
【坂本】あれも、私たちが「こういう使い方をしてください」と指定したわけではないんです。けど、それを店舗の皆さんがいい形で活用してくれていて嬉しいですね。デザインは完成したあとに、どう使われていくかが大切だと思うので、素敵な使い方をしていただけるのはありがたいですね。

駒沢の方たちの反応はどうでしたか?
【坂本】下の子のママ友さんたちからは、施設としておおむね好評です。ただ、私たちがつくったロゴに関しては、正直気づいてるのかは分からないです(笑)。
みんなで施設の空気感をつくり上げる
立ち入り禁止などのサインも、目に入るんだけど、周囲に自然と馴染んでいますよね。
【松本】デザインを進めるなかで、予算の都合でサインの数を減らすタイミングがあったんです。でも、本当に必要なところだけに数を絞った結果、半公共施設らしさにつながったのかもしれません。
それに、最初のオリエンテーションで「地元の人が使う施設であること」がすごく強調されていて。そう考えると、サインもたくさん貼って分かりやすくするというよりも、施設を一周回れば自然と理解できるくらいに、過剰にならないように意識しました。

地元の方であれば、繰り返し利用する前提だからですね。
【松本】サインは人を誘導するためにあるので、どうしてもやりすぎてしまいがちです。だけど「こんなにいらないよね」と思う場所もあるので、駒沢パーククォーターでは実験とまではいかないけど、最小限に減らすことでどうなるのか試してみたかったんです。おそらく今後も、時間をかけながら、ちょうどいいところを探っていくと思います。
植栽の前にある「はいらないでね」という文字も、あまり禁止している感じがなくて、怖くない言い方だと感じます。
【松本】以前、別の施設のデザインを手かげた時に、「禁止するんじゃなくて、みんなが自然とそうしなくなる雰囲気をつくり上げる設計にする」というようなことを話し合ったんです。それがすごく印象に残っていたので、今回もそこを意識しました。
そういう空気感があれば、ゴミもポイ捨ても起きにくくなると思うんです。デザインだけじゃなくて、施設に関わる人たちが同じ意識を持ってると、そういう空間が出来上がるんじゃないかなと。とはいえ、問題は何かしら出ると思うので、その都度少しずつ解決していくことが大切ですね。
【坂本】最初のオリエンテーションでも「ドッグフレンドリー」が強調されていたので、よっぽど大事なテーマなんだと感じました。ペットが入れないエリアも単に「禁止」と伝えるんじゃなくて、「ペットもウェルカムだけど、ここから先はごめんね」という雰囲気のやわらかい伝え方がいいかもしれないって話しながら、ペットとの共存を軸に全体のトーンをつくり上げていきました。

今回、地元・駒沢の仕事を手がけてみて、いかがでしたか?
【松本】大体の仕事は、デザインが完了した時点で関係が一区切りすることが多いんです。だけど駒沢パーククォーターは家の近くなので、普段買い物にきたり、実際にどう使われてるのかをチェックもできたりして。そういう関わり方は初めての経験で、新鮮ですね。
【坂本】「いまはこう使われているんだな」とか、「ここはサインが足りなかったかも」とか、「逆にここやりすぎたかな」ということを、お客さまの様子を見ながら振り返れるところが面白いです。
上の子は小学校4年生なんですけど、学校帰りに友達とパーククォーターに遊びに行ったらしいんです。あとは偶然なんですけど、下の子の保育園の卒園式の謝恩会が、パーククォーター内で開かれることになって。そういう関係が生まれたのは嬉しいですし、その時にみんなの反応を知れるのも楽しみですね。
一緒に育てていけるような仕事を
駒沢にはずっと住んでいるんですか?
【坂本】上の子を妊娠していた頃に引っ越してきたので、もう10年くらいになりますね。
【松本】これまでで一番長く住んでる街になったよね。
【坂本】ずっと目黒に住んでたけど、それよりも長くなりました。もともと駒沢に住むつもりじゃなかったんですけど、不動産屋さんから空いたばかりの物件を紹介されて。それがいま住んでるマンションでした。行ってみるとマンションやご近所の雰囲気も合わさって直感で良いなと思い即決したんです。
【松本】しかも、その不動産屋さんも、同じマンションに住んでたんです。

awhile chai&sodaの古川さんとも同じマンションだそうですが、それは偶然だったんですか?
【坂本】ご近所さんとして初めて出会いました。一時期、古川さん家の上の子と同じ保育園に通ってたこともありました。
【松本】僕は多摩美術大学出身なんですけど、古川夫婦と一緒だったのもあとから分かったことなんです。
不思議なご縁ですね。最後に、今後はどういう仕事に挑戦していきたいですか?
【松本】なんだろう。これまで通りですかね。ただ、駒沢パーククォーターみたいな仕事を、今後もやっていきたいですね。今回はロゴデザインを起点にしてサインをつくったり、いろんなツールやグッズにも展開できたのが楽しかったです。ひとつのデザインだけじゃなくて、ロゴとサインを横断的に手がけられる仕事は、ダイナミックで面白いかなと改めて感じました。
【坂本】完成して終わりじゃなくて、その後も普段から関わり続けられる仕事はいいですよね。終わったら「いってらっしゃい!」と、潔く手離れする仕事もいいですけど、少しずつメンテナンスしていきながら、一緒に育てていけるような関係性の仕事に、これからも関わっていけたらと思います。

text / Lee senmi photo / Ikue takizawa
『今日の駒沢』編集部
駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。
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