駒沢オリンピック公園のすぐ隣にある多目的スペース「gallery Aqui(アキ)」。世界あちこちのアートを楽しむオーナーのミセスKが、駒沢の人にも紹介したい、最近おもしろかった展示やアートをレポートします。第二回目は、ロンドンへの短期語学留学の合間に、気になるミュージアムやギャラリーでアートめぐり。ロンドンやエジンバラで足を運んだ8箇所をレポートします。
語学を学びながらロンドン暮らしを満喫。
この夏、思い立ってロンドンへ、2週間の語学学校へ行ってきました。
私がお世話になったのはEF (Education First)のロンドン校。60年以上の歴史を持ち、世界50都市にキャンパスを展開する老舗の語学学校です。

ロンドン校は元小学校をリノベーションしたそう。小さなコートヤードやカフェテリアもある、かわいいキャンパスでした。

生徒たちはフランス、イタリア、オランダ、コロンビアやメキシコ、アジアなどから集い、10代から70代と年齢もさまざまです。
英語を学びながらいろいろな国の人と話し、文化を知る。気がつけば、友達が世界中にできた気分になりました。
授業も日本の英語教育とはちょっと違います。発音ではSyllable(音節)を意識するなど、初めて知ることもたくさん。英語を勉強するというより、実際に使いながら身に付けていく感覚です。
暮らしてみてわかった、普段着のロンドン。
滞在先は学校が契約しているホームステイかレジデンスの2択。私は自炊をしたかったので、レジデンスを選びました。場所はロンドン南部のルイシャム。何度もロンドンを訪れている私も、初めてのエリア。
観光客が多い中心部とはまた違う、暮らしの匂いがする、普段着のロンドンという感じで新鮮でした。

レジデンスは眺めも部屋も最高でした。ただ、線路に挟まれた建物だったため、ほぼ24時間電車の音がBGMでした(笑)。

そして、もうひとつ想定外だったのが、ロンドンの熱波。日本のように電車やカフェ、建物に入ればエアコンで快適!というわけにはいかず。電車もミュージアムも、まるでサウナのようでした。
それでも、この季節ならではの楽しみがありました。夜の10時を過ぎても空が明るく、1日が長いのです。ハイドパークやテムズ川で、ゆっくりとサンセットを眺めることが日課に。
大人になってから、大好きなロンドンで英語を学ぶ。こんな贅沢な時間を過ごせることに感謝、毎日が最幸でした。


放課後はミュージアム巡り·ロンドン編

ロンドンでは学校の空き時間を利用して、気になるミュージアムやギャラリーを巡りました。
イギリスのミュージアムは、主要な常設展が無料のところも多く、アート好きにとっては楽園! 歴史を刻んできた建造物そのものもアート。スケール感と美しさには圧倒されます。
ミュージアム巡りのもうひとつの楽しみが、併設されているショップやカフェ。空間や器、メニューのプレゼンテーションもおしゃれなところが多く、勉強になりました。
ロンドンで出会ったアートの中から、得に印象に残ったものをご紹介します。会期が長いところもあるので、ぜひ足を運んでみてください。

ミュージアム1 Tate Modern
「テート·モダン」で話題の
フリーダ·カーロの大規模展覧会を鑑賞。

ロンドン滞在中に必ず訪れる、お気に入りミュージアムのひとつ。学校からも徒歩圏です。
ラッキーなことに、メキシコの画家フリーダ·カーロの大規模展覧会「FRIDA THE MAKING OF AN ICON」が開幕したばかりでした。
前売り券が史上最多の販売記録を更新していたことも知らなかった私は、窓口へ直行。ところが、6週間後までチケットは完売!
「滞在中に観たい」と粘り、なんとか翌週のチケットを手に入れることができました。

館内は世界中から集まった、フリーダ·カーロ マニアで大賑わい。美術館とは思えない熱気でした。


さらにその先には、フリーダから影響を受けた次世代アーティストたちの作品がずらり。見応えたっぷりです。
フリーダがどのようにして世界的なアイコンとなったのか、その軌跡をたどる鑑賞の旅は4時間を超えていました。




没後70年以上を経ても色褪せない作品の力強さ。そして、そこに宿るフリーダの生命力を感じ、元気をもらいました。
展覧会は2027年1月3日まで。フリーダ·カーロに会うためだけにロンドンを訪れてみるのもおすすめです。






ミュージアム2
The Photographers Gallery: Homepage
片山真理さんの作品に会いに
「ザフォトグラファーズギャラリー」へ。

「ザ フォトグラファーズ ギャラリー」は、1971年にイギリス初の写真専門公共美術館としてオープン。
古いテキスタイル倉庫を2年かけて改装した館内は3フロアのギャラリー、教育スタジオ、カフェ、書店、プリント販売ギャラリーがあります。大通りから階段を降りていくアプローチに、毎回ワクワクします。


ここで観たかったのが「JAPA NESE WOMEN PHOTOGRAPHES-FROM 1950S TO NOW」(〜2026年9月27日)。

戦後間もない1950年代から現在まで、27人の日本人女性写真家による200点以上の作品が展示されています。
アイデンティティ、ポップカルチャー、ファッション、日常生活……。それぞれの時代を生きる女性写真家たちの視点から、日本社会の変化や女性の生き方が浮かび上がってきます。



石川真生さん、蜷川実花さん、長島有里枝さん、やなぎみわさんなど、個性豊かな作品が並ぶ中、私がとりわけ楽しみにしていたのが片山真理さんの作品です。

片山さんは9歳から義足とともに生き、自らの身体を「生きた彫刻」と捉え、セルフポートレートをはじめ、精巧な手縫いのオブジェや映像など、多様な表現で作品を発表しています。日本のみならず、ここ数年、海外で注目を集めている若手アーティストのひとりです。

彼女の作品を初めて観たとき、魂をキュッと掴まれたような心地よい衝撃を受けました。それ以来、機会があれば作品を追いかけています。
今回も気がつけば、ここに3時間ほど滞在。その間、多くのロンドナーや学生、観光客が訪れ、作品と真剣に向き合っていました。会場のボードに貼られたメッセージを読みながら、ロンドンで日本人女性アーティストの作品が受け止められてたことを、うれしく思いました。
ミュージアム3 Photography Centre
さらに片山さんに導かれ
「V&A 写真センター」へ

「好き」をひとつ見つけると、そこから次の「好き」へと世界が広がっていきます。今回のロンドンでは、そんなことを実感する機会が何度もありました。
片山真理さんの作品をもっと観たくなり、向かったのがサウス·ケンジントンのV&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。
装飾芸術とデザイン分野で世界最大級の規模を誇る博物館、その館内に写真センターがあります。

毎回見惚れるエントランスのシャンデリア。アメリカのガラス彫刻家デイル·チーフリによるもので、そのサイズは高さ8.2m、幅は3.7m もあるそうです。

写真センターは7つのギャラリーで構成され、1820年代から現代までの約80万点もの写真を所蔵。
V&Aは何度か来ていますが、写真センターを訪れるのは今回が初めて。またも片山真理さんの作品に導かれて、新しい場所を知ることができました。
ここで、ちょっとうれしい出来事が。
入口の監視員の女性に片山さんの展示場所を尋ね、ほかの作品から観ていた私に、しばらくして背後から「確かにあったから楽しんでね」と声が。振り向くと先ほどの監視員でした。
わざわざ場所を確認し、私を探して声をかけてくれたのです。そのホスピタリティに感動しました。

教えてもらった通り、片山さんの作品はパラソル財団ギャラリー97号室の現代写真ブースに威風堂々と展示されていました。

「tree of life(生命の木)」と名付けられた作品は片山さん自身がフォトグラファー、モデル、オブジェ作家の3役をこなし、特別に設えた鏡面スタジオで自らシャッターを切った渾身の作。
5年に及ぶ構想を経て完成した2.4mの大作は圧巻です。多くの人が足を止め、長い時間何かを探すように作品の前に佇んでいる姿が印象的でした。
ここに展示されている5点は、V&A 博物館のための委嘱作品。ロンドンでの片山さんの作品に対する高い評価が伺えます。
2027年8月29日まで展示予定。これからロンドンを訪れる方には、ぜひ足を運んでほしい場所です。

ミュージアム4
White Cube Bermondsey, London
「ホワイトキューブ·バーモンジー」の
巨大空間で、現代アートに身を委ねる。

以前から評判を聞き、一度行ってみたかったギャラリーのひとつ。
バラ·マーケットやロンドンブリッジに近いバーモンジーにある「ホワイトキューブ」は元倉庫を改装した巨大なギャラリーです。

私が訪れたときは「上下逆さまの絵画」で知られるゲオルク·バゼリッツの展覧会が開催されていました。
彼は戦後ドイツの現代アートを牽引したアーティストのひとり。今年4月に88歳で亡くなったバゼリッツが構想を手がけた最後の展覧会でした。

人を飲み込むほど大きな絵とそれに負けない巨大な空間。
ここでしか味わえないスペクタル感と、作品から発せられるエネルギーが静かに伝わってくる素晴らしい展覧会でした。
11月からはアンゼルム·キーファーの展覧会が開催されるそうで、こちらも観てみたい。現代アート好きは、要チェックのギャラリーです。


ミュージアム5
Royal Botanic Gardens, Kew | Kew
ユネスコ世界遺産の植物園「キューガーデン」で、
ヘンリー·ムーアの野外彫刻を愛でる。


帰国前日、なんとか滑り込むことができたのが、キューガーデンで開催されていた「ヘンリー·ムーア:モニュメンタル·ネイチャー」です。


庭園も温室も、そして広大な自然そのものがギャラリーです。
イギリスを代表する彫刻家ムーアの巨大なブロンズ彫刻約30点を含む、100点以上の作品やドローイングが、世界最大級の植物園を舞台に展示されています。
自然と調和するムーアの彫刻を、美しい自然の中で体感できるのも英国ならでは。2027年1月31日まで開催しています。

英国ミュージアム巡り·エディンバラ編
ロンドンでの学生生活を終えた私は、スコットランド·エディンバラへ3日間のショートトリップへ。
到着と同時にあちこちでバグパイプの音色が響き、パフォーマンスが繰り広げられている街は毎日がアートフェスティバルのよう。



エディンバラのミュージアムは世界的に有名なコレクションだけでなく、スコットランドの歴史や自然、ケルト文化に焦点を当てた作品がギュッと詰まっています。
今回訪れた3つの美術館もすべて入場無料。各館を結ぶ便利なギャラリーバスも出ています。
ミュージアム6
National Galleries of Scotland
「スコットランド国立近代美術館」で、
アートに囲まれた静かな時間


朝から霧に包まれた幻想的な日に訪れたのが、「スコットランド国立近代美術館」です。美しい庭園の中に「モダン·ワン」と「モダン·ツー」の2つのミュージアムがあります。
カフェでランチをいただいてから、アート巡りへ。

「モダン・ワン」のカフェには美味しいヴィーガンメニューもありました。
「モダン·ワン」にはサルバドール·ダリやルネ·マルグリット、ピカソ、アンディ·ウォーホール、フランシス·ベーコンなどの絵画や人気のアーティストによるインスタレーションの宝庫。
草間彌生、ミロなどの屋外彫刻が点在し、庭を歩くこと自体がアート体験。

なかでも印象に残ったのが、ルイーズ·ブルジョワの「スパイダー」。六本木ヒルズにある「ママン」の約3分の1のサイズですが、それでも室内での迫力は十分。

続いて現れたのが日本でも話題を呼んだ彫刻家、ロン·ミュエクの「少女」。
広い床に生まれたての赤ん坊がゴロンと横たわる光景はなんとも異様。よく見るとへその緒はついたまま、表情や肌感も驚くほどリアルです。
非現実的な大きさと相まって、観る人を一気にミュエック·ワールドへ引き込んでいきます。

必見はサルバドール·ダリがパトロンのために制作した「ロブスターテレフォン」。受話器がレッドロブスターではなく、オフホワイトのバージョンは世界でもレアなのだそう。

そして、思わず足が止まったのは、キャロライン·ウォーカーの「シアター」。
ほぼ等身大の絵画なのに、まるで手術室が続いているような不思議錯覚に陥ります。コロナ禍の病院の分娩室で帝王切開直後の緊迫した瞬間をとらえた作品です。
今回は時間の都合で「モダン·ワン」のみ。次回は「モダン·ツー」へ。再訪する楽しみが、またひとつ増えました。
ミュージアム7
National Galleries of Scotland
フェルメール最大級の絵画を観に、
「スコットランド国立美術館」へ。

ここで観たかったのは、オランダの画家ヨハネス·フェルメールの初期の傑作「マルタとマリアの家のキリスト」。
現存するフェルメール作品の中でも最大級の大きさ(158.5×141.5 cm)を持つ、珍しい大作。そして、フェルメール唯一の宗教画です。
実は数年前、この作品について本の原稿を書いたことがありました。でも、実物を観たことがない。今回は、いわば「答え合わせ」の鑑賞です。
小ぶりな作品が多いフェルメールにしては珍しい大作。初期の作品ということもあり、後年の作品とは少し趣が違います。
そのためか、思いのほかゆっくりと向き合うことができました。


ほかにもラファエロ、レオナルド·ダ·ヴィンチ、エル·グレコ、モネ、ゴッホ、レンブランドなど、ヨーロッパで名だたる巨匠の傑作が並んでいます。

悠久の時を経ても息を呑むほど美しい内装や建築は、格好のフォトスポットです。作品とともに写真撮影ができるのもうれしいところ。
ミュージアム8
National Galleries of Scotland
「スコットランド国立肖像画美術館」で、
時代を超えたアートの出会い。

このミュージアムのお目当ては、18世紀のスコットランドの画家、ヘンリー·レイバーンの名作「スケートを滑る牧師」。スコットランドの切手にもなっているあの有名な絵を、実際に観てみたかったのです。
ところが、ここで思いがけない出会いがありました。
訪れたとき開催されていたのは、デジタル写真家ウエンディ·マクマードの回顧展「The Digital Mirror」。その作品と並んでいたのが、なんと「スケートを滑る牧師」でした。
18世紀の絵画と21世紀のデジタル写真。時代も表現方法もまったく異なる作品が並ぶことで、思いがけない新しい世界が生まれていました。
これは、うれしいサプライズ。新しい作品と並び、絵の中の牧師も今にも氷の上を滑り出しそうに見えました。

常設展では、悲劇の女王メアリー·スチュアートをはじめ、「シャーロック·ホームズ」の作者コナン·ドイル、俳優ショーン·コネリーまで、時代やジャンルを超えたスコットランドゆかりの人物たちが一堂に会しています。

そして、作品と同じくらい印象に残ったのが、ネオ·ゴシック様式の荘厳な建物。夜空のような美しい天井には、2000個もの金色の星と47の星座が描かれています。見上げていると、しばし宇宙を旅しているような気分に。

旅の最後に1階のカフェへ。
ゆったりとした空間で、人気の自家製スコーンとミルクティーをいただきながらひと休み。大きな窓の向こうは絵画のような景色が広がっていました。
語学を学びながらロンドンとエディンバラで思う存分、アート巡りをした3週間。好きなものを見つけると、そこから世界が広がり、旅はもっと面白くなっていきます。
ライターK
駒沢在住.
執筆活動をしながら公園前で小さなギャラリーを営んでいるライターKの超私的レポートです。
ホッとひと息ついたときに目にしていただけたらうれしいです。
『今日の駒沢』編集部
駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。
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