駒沢にある“暮らしのショールーム”。SEMPRE会長の自宅『SEMPRE HOUSE』を訪ねて|vol.1

家具、照明、食器やキッチンツールなどの雑貨からアートまで、独自の目線でプロダクトを取り揃える「SEMPRE」。1997年に東京デザインセンター1Fで創業し、その後1999年にライフスタイルそのものを提案する場として青山・骨董通りに移転されました。2010年には池尻大橋に本店を構え、オンラインストアと共に「暮らしの提案はどうあるべきなのか?」を常に考え、「心地よい暮らし」をアップデートしています。

そんな「SEMPRE」の世界観を体感できるショールームが、ここ駒沢にあるのを知っていますか? それはなんと、代表取締役会長・田村昌紀さんのご自宅「SEMPRE HOUSE」。お客さまから要望があれば、自宅を開放して「SEMPRE」で扱う家具やアートのある暮らしを紹介しています。

今回は「SEMPRE HOUSE」のお話と駒沢に50年住む田村さんの地元への思い、そして願いについて伺いました。

SEMPRE HOUSEに住む田村昌紀さん

スタンダードな土地で「心地よい暮らし」をつくりたかった

 駒沢に住んで長いと伺いましたが、いつ頃からお住まいなんですか?

【田村】1976年にアメリカから帰国してから、約50年ほど駒沢に住んでいます。

最初はね、デザイナーやインテリアを仕事とする仲間の多くが山手の内側に住んでいたから「なんでそんな遠くに住むの?」と言われましたよ(笑)。地下鉄もまだなくてバスでしたし。でも「そんな遠くないよ」って言ってね。

はじめから、家を構えるなら駒沢と決めていたんですか?

【田村】いえいえ、実はね、はじめは仕事の場の青山で探したんですよ。でもちょっと違うな、となって次は中目黒。これもうーん、どうかなとなって駒沢に辿り着きました。マンションじゃなくて一戸建てにしようと決めていて「暮らし」を軸にした家づくりを考えていきたいと思っていたら駒沢になったんです。

今の土地を選んだ決め手はなんでしたか?

【田村】東京のタウンハウスとして、当時としては標準的な場所だったからなんです。駒沢大学駅から歩いて10分ほどの住宅街にあり、土地は40坪。くすの木を植える為にあとから買い足して42坪。

道路に接しているのは一面だけというよくある場所にしたんです。そこに建物とインテリアと暮らしをつくっていき、どうやって快適に暮らすかをテーマにしよう、と。

そういう発想で決めました。広い土地ではないし、全面緑が見渡せるわけでもない、「場所がいいからね」で終わらないところなので、どう工夫していくかが考えられる。だからここにしたんです。

その限られた土地の中での、快適な暮らし、家づくりへこだわりや想いを教えてください。

【田村】50年前に暮らしはじめて、建て直して40年。最初は家族4人と愛犬2匹の暮らしでした。だんだんに子どもたちが育ち、独立するという時の変化を経て、今は1階がオフィス、2階がリビングとキッチン、3階が仕事部屋兼寝室、屋上が庭になっています。家族の成長と共に、家の使い方も変化してきましたが、この変化こそが暮らしをつくることそのものなのですよね。だからこそ、子どもが小さい時に、家づくりに取り組みたかったという思いもありました。(この辺りの詳しいお話は、vol.2でご紹介)

その中で大切にしたのは、くつろげる間取り、食卓の雰囲気、風の流れ方と光の入り方です。

自宅をショールームとして開放するということ

ご自宅をショールームとして開放されていると伺いましたが、誰でも訪れることができるのですか?

【田村】店舗でどんな暮らしになるかイメージわかないなどの要望があったり、スタッフが実際に暮らしのなかにあるプロダクトを見てもらいたいと思ったりした場合には来てもらっています。最初は「SEMPRE HOUSE」に来るとみんな驚くんですよ。

実際に私が暮らしているからね。

訪ねた方が驚く気持ちがよくわかります。気持ちよく整っている空間ですが、見学予約が入った日の前日は、丹念に掃除をされるのですか?

【田村】いえいえ。いつ来てもらっても大丈夫なように手入れしていますから。私の時間が合えばツアーもしますよ。時間が合わないときはスタッフが案内しますが、勝手知ったるものです。収納扉のどこを開けてもらってもいいし、むしろ、収納の使い方もみていただきたいです。

見学に来た方たちの反応はどうですか。

【田村】やっぱり実際に見ると、感じるものがあるのでしょうね。満足度と納得度が違うと言っていただきますね。うちに置いてある家具のほとんどは「SEMPRE」で販売しているのですが、お店で見てもわからないこともいろいろとあるんです。サイズ感もそうですし、ソファー1つをとっても、床との関係性や空間の捉え方など。ここへ来てもらって説明すると光の抜け具合が実際にわかるし、こだわりの3本脚の椅子の良さも感じてもらえます。

私たちは、ショップでものを販売するだけではなく、「暮らし」を一緒に考えていきたいと思っている。お客さまがこの家をそのままつくることはできなくても、「SEMPRE HOUSE」がそれぞれの方の大切にする「暮らし」の役に立てばいいですね。

駒沢には「大学街」としてもっと文化を発信してほしい

駒沢に50年お住まいですが、この街の好きなところはどこですか?

【田村】それはもう、駒沢公園ですね。今日も行ってきましたよ。1日に2回は行きますね。愛犬のチビと一緒にね。公園に行ったときにはお気に入りのカフェに行ったり、夕方だったら一杯飲んだりしていますよ。

田村さんの愛犬のチビ

お気に入りのカフェはどちらですか。

【田村】「YOUR DAILY COFFEE ROAST AND BREAKFAST」ですね。ここはいちばんよく行きますね。あとは「スターバックス コーヒー」か「Mr.FARMER 駒沢オリンピック公園店」も。

長年お住まいだからこそ、駒沢の街に思うところはありますか。

【田村】駒沢にはせっかく大学があるんだから「大学街」として文化を発信してもらいたい。それから、やっぱり本屋が育たないのは残念だよね。以前はあった2軒ともなくなってしまって。本屋っていうのは、本を売っているんじゃなくて、文化を発信する場所。

そういう場所がないのが非常にもったいない。衣食住すべてにおいて文化度をあげていってもらいたいなと思うんですよ。

<vol.2に続きます。>

SEMPRE

インテリアショップ

〒153-0044 東京都目黒区大橋 2-16-26

OPEN:11:00~18:00 (金曜・土曜のみ19時まで)
CLOSE:水曜

※SEMPRE HOUSEについてはSEMPREに直接お問い合わせください

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