
生地の耳がぷっくり膨らんだ、本場のナポリピッツァを楽しめる「pizzeria TONINO」。いろんな方にナポリピッツァを楽しんでもらいたいと、下高井戸店、テイクアウト専門の梅ヶ丘店に続き、3店舗目を駒沢の新たな商業施設にオープン予定です。
生地の材料がシンプルな分、熟練した職人技が必要なナポリピッツァ。それにかける熱い想いやこだわりについて、新店舗の店長になる堀江さんにお伺いしました。
イタリア人直伝の本場のナポリピッツァ
TONINOは下高井戸店がはじまりですが、お店はいつできたんでしょうか?
【堀江】今年で開業23年目になるんですが、当時はナポリピッツァ専門店はまだ珍しく、イスキア島をイメージした建物と内装で始めたお店です。
「TONINO」の「ノ」は日本語の助詞だったんですね! TONINOが打ち出しているナポリピッツァの特徴はどんなところにありますか?
【堀江】まず、生地に使う原料は4種類しかありません。小麦粉、酵母、食塩、水だけ。とてもシンプルな構成です。あとは生地を伸すときに、麺棒などを使わずに手だけでかたちづくっていきます。
手で伸ばすことが重要。
【堀江】発酵した生地は空気を含んでいるので、麺棒を使うと、空気が全部抜けていっちゃうんです。イメージとしては、生地の空気を手で外側に押し出していく形です。そうするとピッツァの耳の部分に空気が流れるので、ふっくらとした食感を楽しめます。

ピッツァの耳がモコっと膨らんでいたのは、そういう作り方をしていたからなんですね。ピッツァ職人が頭の上で回しながら生地を伸ばしていくイメージがありました。
【堀江】あれは競技のパフォーマンスとしてみせるためのものなので、お店ではあんまりしないですね(笑)。逆に発酵した生地を触りすぎると、グルテンで収縮しちゃうんですよ。
パフォーマンスだったとは!
窯に入れてから、1分間が勝負
材料も4種類と、とてもシンプルですね。
【堀江】あとは情熱を入れています(笑)。生地は450℃くらいの高温の窯で、1分〜1分半で一気に焼き上げます。そうすると生地の中に入ってる空気がふわっと膨らむんです。
窯に入れたと思ったら、すぐに出さないとなんですね!
【堀江】そうですね。1分の間に釜の中でくるくる回して、ムラがないように焼いていきます。お店では一度に4枚〜5枚と焼くので、練習の積み重ねでうまく焼けるようになります。

小麦粉はイタリア産ですか?
【堀江】イタリアの製粉会社のものを仕入れています。国産の小麦粉も試作しましたが、やっぱりイタリアの小麦粉の方が香りが良くてナポリピッツァとの相性が良かったんです。
ピッツァ作りの一番おもしろいところはどこなのでしょう。
【堀江】材料がシンプルな分、その日の気候に生地の状態を左右されやすいんです。いつも、昨日よりもおいしいものを作ろうという気持ちなのですが、毎日仕上がりが変わるので、工夫のしがいがあって飽きない、という意味ですごくおもしろいです。
気温や湿度のことを考えながらピッツァを作って、お客さまに提供する時は、いちばんおいしい状態になっているんですね。
【堀江】はい、それを目指しています。

ナポリピッツァを学びに単身イタリアへ
堀江さんはピッツァ職人になってから、どれくらい経ちますか?
【堀江】16年ですね。3年前からTONINOで働いています。その前は、2年くらいイタリアのナポリで働いていました。
イタリアで本場のピッツァを作ってた。
【堀江】もともと日本のイタリア料理店で働いてたんですけど、一度辞めて他の仕事をしていたときに、そのお店のシェフからたまたま電話があって。「いまは何をやってるんだ」と聞かれて、「違う仕事をしてる」と答えると、「もう1店舗やろうと思っている。ナポリピッツァが流行ってるみたいだから、イタリアに行って覚えてきたらやるか?」と聞かれたんです。
急なお誘い!
【堀江】他の仕事をしながら「本当にやりたいのはこれじゃないしな」と、モヤモヤしたものを抱えてたこともあって、その電話をきっかけに27歳の時に初めてイタリアに行きました。まずはイタリア語を学んで、学校と提携してたピッツェリアで、ピッツァの作り方を教えてもらうコースを受けました。
すごい行動力ですね。
【堀江】1年後に帰ってきたんですが、ちょうどリーマンショックの時期で、やっぱり店をやらないと言われて(笑)。他のお店で働きはじめました。その後にもう一度ナポリに2年間行ったんです。
もっとナポリピッツァを極めたい想いがあったんでしょうか。
【堀江】その想いもありましたし、自分のピッツァが本場で通用するかどうかの、チャレンジでもありました。
かっこいい。通用しましたか?
【堀江】新人のイタリア人にピッツァの作り方を教えることを、任されたりすることもありました。
本場ナポリでも経験を積んだ堀江さんは、駒沢店で現代的なナポリピッツァを作りたいと言います。それは一体どんなピッツァなのでしょうか。明日の後編に続きます。

pizzeria TONINO
〒154-0022 東京都世田谷区梅丘1-16-6 1F
テイクアウト専門
11:30〜15:00
17:00~21:00(L.O.20:30)
text / Lee senmi photo / eriko matsumoto
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