第15話

そのために、L字ソファーベッド買ったんですよ。生意気ですね

話し手
20代男性
聞き手
風音

元気ですか。北海道、楽しいですか?

 そうね。割と、自立してます。食材が結構いいものが揃う。安くて手に入るから。自炊するのが楽しいかな。実家にいたときは、やっぱお母さんが全部つくっちゃうから、つくることはなかなかなかった。

一人暮らしはどう?

 うーん……。人の面でやっぱ寂しいな。会話しなくなるから。
 でも、こうやってなにか電話とかも結構するようになったから、寂しさとかはなくなったかな。

なんとなく東京配属なのかなって勝手に思ってたんだけど。自分的には?

 自分も東京配属かと。まぁでも、北海道転勤になったことは良かったなって、自分の中では。最初すごく嫌だったんだけど。なんか、強制的に自立させるって意味でもそうだし。それだとどこでもいいんだけど、それプラス北海道のまちの魅力ってやっぱすごくあって。例えば長野だと、自然はあるけど海がないじゃない。

 神奈川だと海のほうがイメージが強い、っていう感じで、どの土地もどっか秀でてるとこはあると思うんですけど、なんか全部強いというか。山も都心も、全部。しかもそれが密集してるというか。山も近くて川も海も近くて、みたいな。一時間圏内で全部完結できる。すごくバランスの良い街かな。

 すごくご飯も美味しいし、観光地も割とあるし。まだ冬は経験してないけど、たぶんウィンタースポーツもすごく盛んで、っていう面で、すごくバランスの良い都市だなぁって、自分的には思っています。

なんか、めちゃくちゃ生き生きして見える。

 本当ですか。あぁ、良かったです。最初はけっこうキツかったですけどね。これまでは簡単に頼れる人もいたし、会おうと思ったら誰とでも会える環境だった。
 最初の1ヶ月ぐらいは友達が一人もいなくて、ずーっと家にいたから、一人で散歩するか、とかしかない。けっこう孤独は感じてた。

友達できた?

 自分、食品メーカーなんですけど。メーカーって絶対どこも転勤があって、他の会社のメーカーの子たちも、同じような境遇というか。東京だけど、北海道に転勤になりました、みたいな子がけっこう多い。北海道出身の子ってぜんぜんいなくて。
 そこで集まる。メーカー飲みみたいな飲み会がちょこちょこあって。やっぱ東京の子とは仲良くなる。

 あとマッチングアプリは、けっこう最初こっちでやって。普通に北海道ってどういうとこなんだろうっていう意味で、北海道の子とすごくマッチして。

あるとき、こっちの人に「広島の人が、開拓のときにすごく根付いたから北広島なんだよ」って

 ご飯食べて。いろいろ方言とか、いい飲み屋とか教えてもらって、けっこう繰り返してて。それはいい経験だったかな。

確かに、方言とかがある環境みたいなのも初めて。

 そう。北海道は割と全国から人が集まるから、方言は少ないほうではあるんだけど。この土地の特有のこととかをいろいろ教えてもらって、それも楽しいと思って。こっち、アイヌの言葉も混じってて。土地の名前はとにかくいろんな意味合いがすごく深い。まぁ、深い。アイヌ語、なんかカタカナの地名がすごく多くて。

 カタカナの名前があると、アイヌ語でどういう意味があるみたいなのがけっこういろいろあったりとか。あとなんだろうな。北海道の人のなんか特性みたいななんか結構面白い。北海道の人は、雪かきがうまいっていうのを聞いてて。

 僕の会社って駐車場があって。冬になると雪が積もって車が埋まっちゃうから朝みんなで雪かきするんだよね、みたいな。
 最初、東京から来た新入社員は、最初に地元の人に雪かきの仕方を教わるみたいな。雪かきのコツみたいなのがすごくたくさんあるらしくて。そういうのもすごく聞いてて。そういうの考えたことなかったなって。

 こっちあるあるみたいな、知識みたいなのを聞くのがすごい楽しい。例えばこっちに北広島っていう地名があるんだけど。「北広島ってなんで広島なんだろう?」とかって思って。あるとき、こっちの人に、「広島の人が、開拓のときにすごく根付いたから北広島なんだよ」って。

なるほどね。

 北海道、割と元々人住んでなかったから、アイヌ以外は。で、明治になって、人がいっぱいたくさん入って、だから、歴史がすごく浅くて。かつ、全国から人が集まってるから、いろんな土地に歴史がつまっていてすごい面白い。

北海道配属になってから東京に戻ってない?

 2回、3回? 最初はやっぱ寂しくて帰って。まだ当分お盆まで帰らない予定なんだけど。最初の頃は結構帰ってて。例えば金土日とかで帰るから、例えば、金曜日の夜はおばちゃんち行く。土曜の昼はバイト仲間。夜は高校の友達みたいな。毎食分けて会えるだけ会う。

バイト先が駒沢にあるって言ってたっけ。バイト先の子たちと仲がいいイメージが。ずっと同じとこで働いてた?

 そうですね。4年間ぐらい、他のアルバイトとかインターンもしましたけど。4年間は駒沢にいました。僕らけっこう特殊で、コロナが被ってて。僕は2020年入学なんで、ほんと丸かぶりなんですよ。大学で友達つくれる世代じゃなくて。オンラインだったんで。

 僕らの世代みんなそうなんですよ、バイトですごく仲良くなって。大学の友達はいないけど、バイト先は絶対会うから。バイト先で飲んだりとか。僕らあるあるですね。

なるほどね。楽しかった? バイト。

 うーん……。けっこう楽しかったですよ。駒沢って、かなり芸能人が住んでて。
 割と高級志向のお店でバイトしてたんで、ほんと1日一回芸能人に会えるくらいのお店だったんで、「今日誰来た?」みたいなので毎回盛り上がって楽しかったですよ。

 駒沢は匿名性が高いって有名というか。

僕ですか? 人にめっちゃ興味ありますよ。人のこと、知るの好きだし

 僕の友達が駒沢に住んでて。留学に行ったときに、芸能人の方と知り合って。芸能界の中では、信頼、情報がばれないというか、その人がそこに行ってるっていうのがバレないお店ってやっぱ芸能界で重宝されるみたいで。
 それで名をあげてもらえるぐらい、割と匿名性が高い。僕はけっこう喋ってましたけどね。あはは。こうやって知ってる人に話す程度というか。なにかネットに書くとかは、別に、うん。

バイトの子たちってさ、みんな仲良かった?

 そうですね。みんな仲良かった。僕がとくに仲良くなった、僕と同じぐらいの世代も仲良かったですし。先輩方とも仲良かったですし、僕が4年になったときの下の後輩とも仲良かったですし。三つぐらいにわかれてました。僕は。先輩と遊ぶとき、タメと遊ぶとき、下と遊ぶとき。

なんか、人に興味がある、感じがする。

 僕ですか? 人にめっちゃ興味ありますよ。人のこと知るの好きだし。人好きです。

それはちっちゃいときからそうなの?

 いやぁ、大学に入ってからですかね。いろんな人と飲みたーいみたいな。コミュニティを広げれば広げるほど、自分の知見とかも深まるし。価値観も。それは楽しかったですね。中高は男子校だったんです。割と閉鎖的ではありましたね。
 別に彼女がいたわけじゃないですし、男子校の中で完結してたんで。イツメンみたいな。すごく閉鎖的でした。別に、外に出たいっていうふうに思って思うことすらなかった。閉鎖的というか、楽しい、かなぁ。男子校。

で、進学して、出て、あれなんか面白いかも、まわりって、みたいな。

 あぁ、そうです。中高って似たり寄ったりが多いんですよね。出身も、自分、私立だったんで、だいたい生きてきた環境も似てますし。学力も同じくらい。けっこうルーツが似てるっていうか。
 でも、大学の友達、やっぱ地方から出てきてる子もたくさんいれば、歳も違う人もいっぱいいるし、そこですごく刺激を受けたというか。東京じゃない人の魅力というか。おもろいなって思ったんだと思います。言語化すると。

 言ったら失礼かもしれないですけど、こっちの人って、やっぱり都会を美化してる人って多い。でも、その、まぁ僕が住んでたとこってけっこう都会の中でも都会だったんですけど、それは大多数ではなくて。
 1000万人東京いますけど、いて100万とか。ほとんどは普通の住宅街です。他の大きい地方と変わんない。だから、皆さんが想像するような、テレビの東京はわりと一部分しかいない。だからそこも齟齬があると思ってて。

 例えば、北海道の方とか、「東京すごいとこだよね」みたいな話したときに、北海道との差がわかるんで「東京は結構すごいですよ」っていうふうに謙遜は交えながらも話す。
 そこまで東京っぽくない東京に住んでる人は、わりかし「いや、そんな札幌と変わらないですよ」って。出会った人でたぶん、「東京ってそんな意外とそうでもないらしいよ」ってイメージが変わっちゃう。

自分がさ、東京にいることっていつ頃自覚した?

 それは東京に住んでても思いましたけど。僕が大学のときかなって。

朝、女の子がポニーを散歩させてるような街なんです

 八王子とかってけっこう田舎。東京の中で田舎っていうイメージわかります? 東京の中では割と落ち着いてる。そういうとこに住んで大学の友達は、上京してきて、例えば遊びに行くときに渋谷にくると、「都会すげえ」ってなる。

 で、「いや俺がいま住んでる八王子って思ったよりも普通なんだよね」みたいな話をする。僕の家の周辺とかで遊ぶと、「すげぇとこ住んでんだ」って。「お前はけっこう都会に住んでるよね」って話をされて。「そうなんだ」っていう。割と都心寄りなのかなと。大学のときに地方に出てきた人に言われる。

自分の住んでたとこ、好きだった?

 けっこう好きでした。僕が住んでたところってパリをモチーフにしたつくりをしてるんです。放射状になってるんですよ。真ん中に駅があって、ぐるって。割と大きい家が多いというか。朝、女の子がポニーを散歩させてるような街なんです。

ポニー?

 馬です。周りの家も、庭にプールついてたりとかあるような家で。それが普通とは思ってなかったんですけど、なんか面白いなって。

そういう土地の話って、自分で気になって調べるの?

 ですね。それと、近所のずっと住んでるおばさんとかに聞くし。世間話ですよ。「ここってこうだったんだよ」みたいな。別に聞いてないけど言ってる人が。

 まあもうずっとその辺で育ってたんで。あと、社会に出ると、例えば会社で研修期間に、「自分の住んでるとこを紹介しよう」みたいな。アイスブレイク。
 それで、自分の住んでいたところって、どういうとこだったんだろうって、いま一度調べる機会があるのかなぁって。自分の地元を紹介するみたいな。

 地方の方って、例えば、愛知に住んでる方は、「自分の実家は名古屋です」と主語が大きくなる。僕ら東京の人って、東京だとめちゃくちゃ主語がでかいし、区でもやっぱ主語がでかいんですよ。例えば、渋谷区だったら渋谷もあるし、代官山もあるし、いろんなものが混ざり合ってる。

 だから、東京都、世田谷区、田園調布、みたいな。この最後の町単位、土地単位みたいなとこまで深く絞らないと出てこない。自分はそのミクロな部分まで調べてましたね。これ、東京あるあるだと思います。

なるほどなぁ。それは、土地に限らず、なにか気になったときって、結構とことん調べる?

 興味湧いたものに関しては、ですね。

どういうときに興味って湧く? 人でも物でも。

 自分は、知識として披露できるか。みたいなとこがあるかもしれない。たぶん一生話さないだろうな、ってことには興味がない。使える話に関しては。ちゃんと調べる。実用的じゃなかったから調べないですね。

 ペラペラ喋りたいってわけじゃないんですけど。話題に出たときにサラッと出せるのが。雑学みたいになっちゃいますけど。会話の流れで、話題にフラッと出せるのが。

それはちっちゃいときから。

 勉強を始めたぐらいですかね。世界史とか好きだったんですよ。世界史って、世界の成り立ちみたいな、学ぶので。

たぶんおじさん方だったら、もう飽きてるでしょうし、腰なんかも

 例えば、アメリカの話題を話してるときに、「その根本の要因ってなにか知ってる?」って。
 歴史を知ってて、いまあることって全部歴史からきてるので、自分で知ってると、「なんでこれ、いまこうなってるか知ってる?」みたいな話し方ができる。自分はそれが勝手に知的かなって。まぁ、好きでしたね。会話のタネになる。

なるほどね。だから、話し相手があんまりいないときは寂しかったのか。完全に一人みたいな環境って、そんな慣れてない?

 一人になることは、なかった。最初はやっぱすごかったですね。毎晩誰かと電話をしてました。映画見て気紛らわすとか。そんな感じでした。友だちをつくるより先に出会い系で女の子とご飯に行くとか。マッチングアプリで。
 マッチして会話してたら一週間くらいでだいたい会えるじゃないですか。だからこっち来て1、2週間ぐらいで、会って、ご飯食べたりとかしてます。そしたらそのうち会社関係の友達とかできて。

いまは話相手もいるし、たまに東京も帰るし。

 すごくバランスがいいです。東京にいたら自分は、たぶんこのまま、大学生のままと変わんない。新しい人間関係とか。大学生の頃の友達とか人に会いたい、で止まったままだったんですよ。さらにそこが伸びた、さらに増えたので。

 自分の地元を大切にし、こっちで選んだ交友関係広げようっていう。どっちもうまくやれてるかなっていう感じです。だから、自分的にはすごくこっちに来てよかったなって。

 北海道って安いし広いんですよ、部屋が。僕いま住んでるのが、12畳と5畳の部屋があって、お風呂とバスも別で、家賃六万とか。家が広くて寂しいんですよ。だから、友達きたら二人ぐらいだったらぜんぜん泊まらせられる。そのために、L字のソファーベッド買ったんですよ。生意気ですね。

仕事自体はどう? 楽しい?

 うーん、大変ではありますけど、食品メーカーはやっぱ、自分は食が好きなので。食が好きな人であれば、肉体的な仕事もありますけど、けっこう楽しいと思います。僕も入るまで知らなかったんですけど、例えばスーパーで新店オープンしますみたいなときに、お店の商品入れるのって、メーカーなんですよ。

 だから、いろんなメーカーの人が集まって商品を取ってってつくるんですよ。結構大変なんですよ。ただ大きいスーパーであればすごく時間もかかりますし。そういうのが大変です。

 スーパーが何種類もあって、新店オープンだったら月に一軒ぐらいは絶対あったりするんで、ほかのスーパーも合わせたら月に5回とか並べに行ったりするんですよ。スーパーの店員ではないんで、そんなことする必要ないですけど、昔ながらの付き合いというか。ギャップでした。

スーパーの開店、楽しそうでもある。

 楽しいは楽しいですよ。僕はまだ新人なんで。でもたぶんおじさん方だったら、もう飽きてるでしょうし、腰なんかも。ふふ。

 札幌に来てよかったなとすごく思うのが、日本で観光するって言ったら、もう沖縄、大阪、北海道、札幌。旅行の目的地としては人気が高いので、僕が呼ばなくても、勝手に友達とかみんな来てくれるんですよね。札幌ってだけで、僕がいなくてもそれだけで楽しんでいただけるんで。

なんだかんだめっちゃ楽しそう。

 楽しいんでしょうね、きっと。楽しむしかないっすもん。

めちゃくちゃ芋くさくなってるかもしれない。ぜひ来てください

それ、すごい良い考え方だね。落ち込むこととかってある?

 自分、結構ポジティブなんで、その場では落ち込んだりしますけど、割と解決させるかなんかして、消えますね。1日ぐらいで。

 例えばちゃんとしたプレゼンがあったとして、「こうしとけばよかった」っていう後悔があっても、僕、必ず1日1個なんか楽しみなこととか、それで消えますね。ポイント制です。いいことのポイントが高いんで、自分。誰かに会うとかだけでも。それで消えますね。

 でも自分、ポジティブって、成長がネガティブな人より遅いと思うんですよね。ポジティブな人って、「これ失敗したけど、その分いいことがあるからいいや」って。ネガティブな人は、「これ、できなかった、うわぁ自分最悪だ」と思って、改善しようとする。そこで進歩するのって、やっぱネガティブな人だなって思うんですよね。

 だから結構ポジティブって良くないなと思ってるんで。なんでも受け流しちゃうと思うんですよ、ポジティブな人。本当に反省しないといけないとか、本当にできないことでも、ちょっと反省して、ちょっとわるかったなとかって思っても、「いや、前に進もう」みたいな感じで、そのことを忘れちゃうんですよ。ネガティブな人に比べたら、何度も過ちを繰り返すというか。そんな気がします。

過ちを、繰り返してるなぁって思うときあるの?

 うーん、ありますね。親に怒られたこととかも、自分ポジティブだったから、忘れて繰り返したなって思うことあります。家を出てから、すごく親との関係が良くなったんですよ。自分、母親と性格が似てたっていうのもあって、仲いい時期がすごくあったら、悪い時期すごい長くてみたいな。

 喧嘩するとご飯つくってもらえないみたいな感じで。反抗して謝んない、みたいな感じ。でもこっち来てから、電話とか、実家いた頃なんかほぼしたことなかったんですけど、週1でやっぱしますし。料理とか、母の味をどうやってつくるんだろうと思ったら聞く。

ご飯が出なくても謝らないんだ。

 謝んないです。あっちが話しかけてくるまで待ってました。謝るのがしゃくなんですよね。男の子ってそんなもんじゃないすか。

キラキラ大学生みたいな印象が強くて。

 いやいや。人間っぽいとこいっぱいありますよ。

いいなぁ、一年後とかがすごく楽しみだな。

 めちゃくちゃ芋くさくなってるかもしれない。ぜひ来てください。どういう場所が好きですか。旅行先とか、なにに興味がありますか? 食べ物が美味しいとこがいいのか、人と関わるのが面白い、この人面白いみたいなのか。いろいろあるじゃないすか、旅行の醍醐味とかって。なにが一番ですか。

食べ物は大事だし、普段見ない景色。

 北海道間違いなしですそれは。海あるし、夜景もあるし、なんでもあります。いつでもウェルカムです。

生活史を聞いて:ミニインタビュー
風音さん

表現が悪いけど「人間が生きてんだ」と思いました(笑)

 向こうが大学生の頃、長野に旅行に来たときアプリで知り合って。「ライターさんなんですね」と連絡をくれて、東京で3回くらいお茶して。で、あの辺(駒沢)が地元って話をしていたので、「聞かせて欲しい」と連絡しました。

 最初は、「駒沢に友達とか後輩がいっぱいいるから紹介するし、協力できる」という感じで。すごく協力的な人で。でも私はどっちかっていうと、そこから出た、いまの話が聞きたいから、本人の方がいいなと伝えて。

北海道とつないで。オンラインのインタビューは、丸山さんも慣れてるの?

 そうですね。結構多くて。今回の彼も20代前半だったけど、コロナのタイミングに学生だった子ってオンラインにぜんぜん抵抗ない。

 「東京の中の東京」という言い方を彼はしていたけど、東京で生まれ育った自覚というか、大学でいろんな地方から来た子と出会った話であるとか。
 私は地方で生まれて、都市部に住んだことがないんです。

 ただ普段インタビューの仕事で、とくにいま長野にいて、移住に関する仕事が多いのもあって、「都会で疲れてここに来た」みたいな話を聞いていて。「都会が嫌になっちゃって」とか「疲れて」「合わなくて」みたいな話を「そうなんだ」って思って書いているけど、実際にそこ(都会)で暮らしてる人の解像度が、私の中ですごく低い。
 で、「これをそのままやりつづけていていいのか?」という気持ちもあって、今回応募したんです。

都会の中の人。

 うん。彼もそうだし、(生活史の)ワークショップに行くと、参加している人も都内で生まれ育った方が多かったので、すごい表現が悪いけど「人間が生きてんだ」と思いました(笑)。

人間だった(笑)。

 そう、普通にそうなんですよね。東京生まれ育ちの友人が周りにほとんどいないので、グループワークで会った方の話を聞いていても、イメージがめちゃくちゃ偏ってたなって。

 うちは両親が名古屋出身で。私が生まれてすぐ岩手に行って、そこで育って。母の実家から名古屋の大学に通って岐阜県で就職して、いま長野市にいる。だから本当にイベントとかライブがあるとか、就活の面接で行ったぐらいで。生活している人たちとの接点がなかった。

 最近都内にいる友達も増えてきて。でもその子たちも「引っ越してきた」とか「仕事で来た」とかだったので、「生まれ育っていまも住んでいる」人たちと知り合えたのが、参加してよかったな。