駒沢大学駅から徒歩20分。
深沢不動交差点付近に、「SNOW SHOVELING BOOKS & DIALOGUE」はあります。
表通りに看板はなく、入口も一見してわかりません。
裏手の駐車場に回り、階段を上り、アパートの1室の扉に辿り着く。その佇まいは、まるで秘密結社のアジトのようです。
けれど扉の向こうには、本に囲まれる静かな安心感と、思わず手に取りたくなる一冊一冊が待っています。
気づけば長居し、いつの間にか「また来たい」と思わせる引力を持つ、「本屋の姿をした何か」。 全3回にわたってお届けするインタビュー。
第1回目は、地域の人にこそ知ってもらいたい「スノウショベリング」の魅力について、店主の中村秀一さんにお話を伺いました。

本を売るだけではない「本屋の姿をした何か」
扉を開ける前、「ここで合ってる?」「入っていいの?」と少し身構えてしまう人も多いのではないでしょうかーー。
【中村】初めて来たお客さんは、みんな怖がって入ってきますよ(笑)。
どんな世代の方が多いのですか。
【中村】30代前半から半ばがコアな層で、全体としては20代後半から30代後半までの方が多いです。男女比は3:7とか4:6で女性のほうが多いです。
改めて、「スノウショベリング」はどんな書店なのでしょう。
【中村】実は、「こんな書店です」とあまり言わないようにしているんです。まあ、「ふつうの本屋です」。と言うとかっこつけている感じになりますね。
スローガンというかタグラインを自分でつけては変えて、を繰り返していて、今は「本屋の姿をした何か」という言い方にしています。これをいうと余計みなさんを混乱させてしまうこともあるんですけれどね。だから「本屋です。厳密には、本屋の姿をした何かです」と伝えています。

「何か」という言葉が気になります。
【中村】本はあくまで商材で、実際は本を手渡すこと以上のことがしたいんです。
おしゃべりをしたり、本や本棚を眺めて何かを感じてもらったり、そこからアイディアが生まれる助けをしたり、副次的なものを与えられたらいいなと思っていて。だから、あえて曖昧な言い方をしています。
お店に来る方の目的は、本の購入ですか? それとも、中村さんとのおしゃべり?
【中村】ちょうど半々くらいですね。本が好きで、書店巡りをしている方もいれば、極端に言うとただしゃべりに来る人もいます。本も見ないで、いきなりソファに座って、わーっとしゃべっていくような常連さんも(笑)。
その常連さんに愛をお持ちなのが表情でわかります。駒沢でお店を構えて14年ですが、長く通う方も多いのではないですか。
【中村】そうですね。もちろん入れ替わりはありますが、何年も通ってくださる方もいます。高校生と「大人になりたくない」という話をしたり、大学生と「就活辛い」という話をしたり、そういうコミュニケーションも楽しんでいます。

店名に「DIALOGUE(対話)」が入っているのも、象徴的ですね。
【中村】ぼくの理想は、自分とお客さんの対話だけでなく、お客さん同士の対話もナチュラルに発生することです。応接セットのようなソファを置いているのもそのためです。明言はしていませんが、ここは「話しかけていい場所」「対話が生まれる本屋」だと思ってもらえたら、と期待しながら、実験しています。

選書は、“架空の店主”とともに
一般的な書店では得られない体験を生む場所ですね。選書はどのようにされているのでしょうか。
【中村】「中村さんの好きな本が並んでいるんですね」と言われることも多いですが、実は、そうでもないんです。全部が自分の好みだとなんだか恥ずかしくて。
そうなのですね。
【中村】ぼくのなかで、僕本人とは別の「本屋の店主」というペルソナ(人格)を作っていて、その人物が選んだ本を置いています。
どんなペルソナなのでしょうか。
【中村】都会に住む、1970年代生まれのリベラルな男性。世界に興味があって、自分のなかに大きな空中庭園を持っている人。文学や美術が好きで、世界が少しでもよくなればいいと思っている。そんな書店主が選書しています。そのなかに、僕個人が好きな本を散りばめています。

中村さんが好きな本を具体的に教えてください。
【中村】村上春樹さん、アメリカ文学、カウンターカルチャー、60年代のヒッピーカルチャー、現代美術ですね。
古本と新刊、両方を扱っていますが、仕入れの方法は違いますか。
【中村】古本は、基本的に卸業者に注文していて、新刊は、出版社や取次を通して仕入れています。今はだいたい半々くらいですね。あとは並行輸入の洋書、ZINEやリトルプレスも扱っています。
美しさを残して、答えを置かない空間づくり
本の数は多いのに、雑多さよりも、意図された美しさを感じます。空間づくりについて教えてください。
【中村】ものがどんどん増えて、今の形になっていますね。まえはもっと「美しい店」だったと思います(笑)。もっとかっこよかった、というか、かっこつけた店だったと思います。
今は、どう感じていますか。
【中村】今は、かっこはついてないです。カオスです。ただ、美しくはありたいので、だらしなくならないようにはしています。やるべきことは、たくさん頭に浮かびますね。

オープン当初から、一貫して大切にしていることはありますか。
【中村】なるべく本屋っぽくしないことです。商業臭を出したくなくて、ポップも書きません。
それは、お客さんに、見える形でおすすめするのではなく、見つけてほしいという思いでからですか。
【中村】そうですね。見つけてほしいし、尋ねてほしい。説明しきってしまうと、コミュニケーションが生まれないので。今は、その場でスマホを開けばレビューも見られますが、それってあまりおもしろくないですよね。ぼくはおもしろくしたい。だから、小さな勇気を持って、尋ねてほしいです。
今は、小さな勇気を持ちづらく、また持つ必要がない社会でもあります。
【中村】それは、とても危ないことですよね。とはいえ、うるさい店主にはなりたくないので、「聞きたかったら聞いてね」という距離感でいたいです。実は、めちゃくちゃ敷居が低い、自由な書店なので、気軽に入ってきてもらえたらうれしいです。

vol2. へ続きます…
Snow Shoveling Books & Gallery
TEL:03-6432-3468
営業時間:13:00~18:00(火曜・水曜定休)
『今日の駒沢』編集部
駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。
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