イラストレーター・オガワナホさん。仕事と子育てと、愛犬と。「ちょうどいい」日々のカタチ <後編>

インタビュー
Photo by Rika Wada

ニューヨークから帰国し、また世田谷での暮らしが始まったオガワナホさん。

彩度が低めな色合いをベースにするイラストを、キッチンに続く小さなスペースで描く今のスタイル。そして、よき相棒である愛犬や娘さんとのにぎやかな家族の時間ーー。世界を旅したオガワさんが、「やっぱり東京が好き」と感じ、この街で描き続けるベースを、飾らない言葉で語っていただきました。

ーー 日本とアメリカでの生活を経験し、オガワさんの描くイラストのスタイルに変化はありましたか?

【オガワ】私は自分から何かを強く発信するタイプではなくて。昔からノートにちょこちょこ絵を描くのが好きで、大きい絵よりも、小さい絵を少しずつ描くのが合っているんです。スケッチブックに描いていた絵の延長線で、今の仕事につながっている感覚です。なのでスタイルの変化はあまりなかったかも。

ーー スケッチをする時は、何か頭の中に思い浮かべながら描くんですか?

【オガワ】学生時代はよく公園に行って、ぼーっとしながらスケッチをしていました。人を見たり、街の流れを眺めたり。人を観察することが結構好きなんです。 その時に描いていた人やものをスケッチとして残しておいて、後から「これがモデルになりそうだな」と思って使うこともあります。

ーー 色味や画材の好みは、だんだん見つかっていくものなのでしょうか。

【オガワ】学生のころは、いろいろ試しました。さまざまな画材や色合いを試しましたが、しっくりこないことも多くて。 だんだん、自分はビビッドな色よりも少しくすんだ色合いが好きなんだなと分かってきて。画集などもたくさん見ながら、「こういう色合いが好きだな」という感覚を覚えていきました。

最近は、最初からiPadで描く人も多いと思うんですが、私はどうもうまくいかなくて。 まずB4の紙などにざっくり線を描いて、それをiPadで撮影して、デジタル上でトレースする形で仕上げています。

ーー フリーランスで仕事をしていると、暮らしている場所が仕事にも影響するのかなと感じます。オガワさんは生活の拠点をどう考えて選んできたのでしょうか。

【オガワ】結婚する前は、ネットさえあれば東京にいなくてもいいんじゃないかと思うこともありました。それで小さなスキャナーを持って、3か月ほどバルセロナに滞在したり、観光ビザでニューヨークに住んでみたりもしました。

外で暮らすのも楽しいけれど、やっぱり日本、特に東京が好きなんですよね。ずっと家にいるだけだとアイデアも出ないので、散歩して楽しい場所が近くにあることや、都内に出やすい場所であることは考えていました。駒沢は昔から馴染みもありましたし、たまたま近くで家が見つかったので住むことにしました。

ーー 今の生活と仕事のリズムはどんな感じですか?

【オガワ】かなり混ざり合っている感じです。 専用の仕事部屋があるわけではなくて、リビングの一角に仕事スペースをつくっています。テーブルで絵を描いたり、キッチンがすぐ隣なので夜ご飯の準備をしながら作業したり。 子どもが生まれてからは、夜20時に一緒に寝て、朝2時とか3時に起きて仕事をすることもあります。その時間が意外と集中できるんです。 昼間は家のことをしながら仕事をしているので、しっかり集中するのは早朝か夜が多いですね。

ーー そういう働き方はご自身に合っていますか?

【オガワ】合っていると思います。締め切りが重なるときはきちんと時間を区切りますが、何もない日は本当にのんびりしていますよ(笑)。 エディトリアルの仕事は単発で入ることが多いので、ひとつひとつ短距離走のように仕上げていく働き方が自分には合っている気がします。

12年ぶりに自分のオリジナル絵本を作ったんですが、単発の仕事の合間に少しずつ進めていたので、かなり時間がかかってしまって。 こっちは例えるならマラソンですね。絵本作家さんのように、それを生業にしている人は本当にすごいなと思いました。

ーー お子さんとワンちゃんとの暮らしもにぎやかそうですね。

【オガワ】出産したばかりのころは、絵本にできそうなアイデアはたくさん浮かぶんですが、とにかく時間がない。どう仕事と子育てを両立したらいいのか分からない時期もありました。そういったやりくりは、ここ数年でようやくバランスがつかめてきた感じです。

犬は昔から飼っていたんですか?

【オガワ】私が、知り合いのつてで、誰かが飼えなくなったワイヤーフォックスを譲り受けました。その子がワイヤーフォックステリアで、『タンタンの冒険』に出てくるスノーウィのモデルになった犬です。

ただエネルギーが有り余っていて冷蔵庫を開けたりもできてしまって! キッチンの鍋をひっくり返したり、小麦粉を引っ張り出して家中を粉だらけにしたり。 子どもが生まれる前から、家にはチャイルドロックがたくさんありました(笑)。

ーー お子さんと犬の関係はどうですか? 

【オガワ】その犬が亡くなった後に、今の犬シュナウザーの保護犬が来て、その後、子どもが生まれたんですが、最初はすごく喜んでいました。あ、犬がね(笑)。

子どもが泣くと心配して近づいたり、おもちゃを見せに行ったり。 ハイハイの練習も、先生みたいに先導してくれていました。 ただ、子どもが歩けるようになったときはすごくショックだったみたいで。今まで四つ足の仲間だと思っていたのに、急に人間だと気づいたみたいで、食欲も落ちちゃって。

ーー 娘さんは、お母さんがイラストレーターだと知っていますか? 

【オガワ】最初は教えないようにしていました。親が描いた絵を見て、子どもが自信をなくしてしまうという話を聞いたことがあって。 それで私は「お母さんは絵が描けない」と言っていました(笑)。 でも大きくなってくると、「これ描いたの、お母さんでしょ?」って気づかれてしまって。

まあでも、今は娘も楽しそうに絵を描いています。私には描けないような面白い絵をたくさん描いていますよ。

オガワナホ

イラストレーター

東京都世田谷区生まれ。高校卒業後渡米。ニューヨークのパーソンズ美術大学(Parsons School of Design)イラストレーション科を卒業。

雑誌、書籍、広告、テキスタイルなど幅広い分野で活動中。シンプルで軽やかな線と、独特のニュアンスを持つ色使いが特徴で、日々の暮らしや旅先でのスケッチから生まれる、温かみのある世界観が多くの支持を集めている。最新刊は『くつした ど〜こだ?』(偕成社)。愛娘と愛犬ワイヤーフォックステリアとの暮らしも大切にしている。

『今日の駒沢』編集部

駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。