「握りたてを最速で届ける」Aburi TORAのテクノロジー戦略。江戸前でも回転でもない、新しい寿司体験【後編】<テナントインタビューその⑪>

インタビュー

駒沢に国内4店舗目をオープンした「Aburi TORA」は、握りたてを最速で届けるテクノロジーと、氷結熟成や炙りなど多彩な寿司を提供。好きな一貫を選んで自分だけのプレイリストを作る楽しさは、まるで音楽を選ぶような自由さです。

後編では、Aburi TORAの哲学と技術で実現する、自由で新しい寿司体験の魅力を紹介します。

「Aburi TORA」は寿司店の iTunes。それが、ぼくのイメージです。

カナダで成功をおさめ、「逆輸入」の形で、2019年に二子玉川、2024年に自由が丘、2025年の夏に豊洲に「Aburi TORA」がオープンしました。そして11月に駒沢にも新店舗がオープンします。お店の特徴を教えてください。

Aburi TORA」は回転寿司でもなければ高級江戸前鮨店でもない、それぞれの良さを融合し進化した全く新しい寿司店です。

お客さんがその日の気分や一緒に行く人によって、自由にお寿司を楽しめる雰囲気がいいですね。

【中村】iTunesなんですよ! ぼくのなかで「Aburi TORA」のイメージは。

と言いますと?

【中村】音楽に例えれば、ということなんですけどね。コンサートはカウンターに板さんがいる高級店です。基本は板さんが厳選したおすすめを提供する。省力化や省人化のため店舗にテクノロジーを導入するのではなく、新たな顧客体験価値を作り出すために活用したらどんなレストランができるだろう?と考え生まれたのがAburiTORAであり、それはまさに音楽業界におけるiTunesのポジションと同じだったんです。

お客さんはお寿司はもちろんですが、目の前で握ってくれるパフォーマンスや会話、お店の雰囲気にお金を払います。素晴らしいけれど高額だし、一緒に行く人を選ぶし、頻繁には行けないですよね。うちがiTunesだという理由は、高級店と同じクオリティの寿司を、技術革新によってコストを下げて提供しているという点です。好きなものをカスタマイズすることもできますし、誰とシェアしても楽しめます。

なるほど。わかりやすいですね!

【中村】それに、うちはたくさんのコンテンツがあります。凍らせて熟成させて魚の旨みを引き出した「氷結熟成鮨」、オリジナルソースをのせて炙り、カナダ人を熱狂させた「ABURI鮨」、直火の香ばしさが特徴の日本的な「炙り鮨」、塩とレモンのお鮨、おつまみ、デザートなど。それをクラシック、R&B、ヒップホップ、J-popと考えて好きなプレイリストをつくってください。大人も子どもも大歓迎です。

握りたてを最速で届ける。テクノロジーで寿司はもっとおいしくなる

先ほど、コストのお話が出ましたが、注文するとベルトコンベアでお寿司が一直線に運ばれてくる、このシステムも人件費の削減になっていますよね。

【中村】それがね、違うんですよ。このシステムはコスト云々よりも、カウンターで食ベるときと同じように、おいしい寿司を食べてもらうために考えたものなんです。寿司は握りたてがいちばんおいしいですよね。これは握りたてを高速で出すためのアイディアであり道具なんです。

テクノロジーの導入はコストのためだけではないのですね。

【中村】そうです。魚を熟成させるプロセスも、フードテックに入れることで、捨てることなく使えてリーズナブルに提供できます。昔ながらの老舗店では1か月くらい魚を氷漬けして、腐ったところを削ぎ落すので、手間と時間がかかるからコストも上がりますし、捨てるところも出てしまいます。テクノロジーを上手に取り入れることはメリットしかないんです。

世界を舞台に挑戦し続ける、その力はどこから?
社長が一番、自分の店の寿司が好き

中村さんは日本のみならず世界でチャレンジを続けていますが、その原動力はどのようなところにあるのでしょうか。

【中村】誰もやっていないことをやるのが楽しいんです。自分が考えた新しいことを喜んでくれる人がいることに幸せを感じます。利益を出して人をハッピーにしたいということが原動力かもしれません。あとは、世界でビジネスをして、日本の食文化を発展させつつ、守っていきたいと思っています。それから、生産者さんや若い人々をサポートしたい気持ちもあります。

今後の目標はありますか? 国内で目指す店舗数があれば教えてください。

【中村】30〜50店舗かな、とは思いますけれど、正直、数字は重要視していません。世界的なブランドになって、関わる人をアイディアとテクノロジーで幸せにしたいということです。

大きな夢のお話からお寿司の話に戻りますが、11月にオープンする駒沢店に来店するお客さんに「これは食べてほしい」と思うネタはありますか。

【中村】もちろんABURI鮨は食べてもらいたいですが、個人的には「氷結熟成鮨」の赤身のづけですね。ねっとりしていて旨みが詰まっています。

赤酢のシャリにもこだわりがあるとのことですが。

【中村】オリジナルの赤酢シャリで、そのまろやかな酸味と香りが握りに合います。旨味を引き出すのが特徴です。

お寿司のことを話すとき、力説されて、おいしさを伝えたいという思いが伝わってきます。

【中村】この前も一緒に仕事をしている人に「社長が一番、自分の店の寿司を好きだから信用できる」と言われました(笑)。AI・DXの導入も最高に美味しい寿司を出すためのものです。ぜひ最高の寿司を味わいにきてください。

Aburi TORA

今回撮影で訪れた二子玉川店

〒158-0094 東京都世田谷区玉川2丁目21-1 タウンフロント 7F

営業時間:11:00〜21:00(最終受付 20:00 / L.O 20:30)

text / shino iisaku photo / aya sunahara

『今日の駒沢』編集部

駒沢エリアの情報を発信するウェブマガジンの編集部です。駒沢大学駅に隣接した商業ビルの運営・施設管理・テナントへの賃貸業務を26年、株式会社イマックスが、駒沢エリアに住む人、働く人、活動する人…とたくさんの市民の方々と一緒に運営しています。「駒沢こもれびプロジェクト」を通じて、駒沢エリアに関わるすべての方々に役立つ情報を発信しています。

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